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輪島の神社復興へ 夏祭りで心一つに 壊滅被害の古社、全国から支援

産経ニュース 2024年7月8日 12時0分

1300年の歴史を持つ石川県輪島市の重蔵(じゅうぞう)神社は、元日の能登半島地震で複数の境内社が倒壊するなど壊滅的な被害を受けた。本殿や拝殿も外見上は倒壊を免れたものの、それぞれ「中規模半壊」と「全壊」の判定を受けた。解体か保存か-。神社関係者らは思案に揺れる中、まずは仮宮を設置。能登を代表する夏祭りの開催に向け前へ進む。

輪島市街の中央に位置し、観光名所「朝市通り」の近くにある重蔵神社。平成19年3月の最大震度6強の地震では、鳥居の倒壊や参道の損壊などの被害に見舞われた。その後、10年以上かけて復興を遂げながら、最大震度7を観測した今回の地震では社務所や鳥居、さらに複数の境内社も倒壊するなど、前回を上回る壊滅的な被害を受けた。

行政の危険度判定では拝殿や本殿が全半壊の判定を受けたのに対し、地域の氏子らから保存を望む声が上がる。重蔵神社の禰宜(ねぎ)、能門(のと)亜由子さん(48)は「すぐに再建することは不可能。時間をかけて少しずつ再建していけたら」と話す。

被災地では所有者に代わって自治体が取り壊す「公費解体」がなかなか進まず、神社は全国のボランティアの手も借りて4月下旬以降、自主的に解体作業を進めている。重機を使うと再利用できる木材を傷つける可能性もあるため、ほとんどが手作業だ。

能門さんは「屋根に何万本というくぎが使われ、分別なども大変」と口にする。それでも近畿大の学生のほか、北海道や沖縄などからもボランティアが駆けつけてくれているとし、「本当にありがたい」と話す。

神社では能登を代表する8月下旬の夏祭り「キリコ祭」の開催に向け、クラウドファンディングで6月末まで支援金を募集。無事に目標額の1500万円超が集まった。

また、本殿が損壊して使用できないため、6月27日には仮宮の設置と「御霊遷(みたまうつし)」の儀式が行われた。仮宮の社殿や台座の施工や設置には、愛媛県や福島県の神道青年会の関係者、東京都台東区の下谷神社の氏子らの協力を得た。

まだ周囲にはがれきが点在する中、夏祭りの開催に向けて少しずつ準備が進む。仮宮の設置に協力した下谷神社の阿部明徳宮司(70)は「祭りは氏子の心を一つにする。まずは祭りの復興に向け、(自分たちも)助けていきたい」と力を込めた。(山本玲)

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