大災害が発生すると、それまで当たり前に利用できたインフラやサービスが停止し、生活が脅かされる。警視庁災害対策課はX(旧ツイッター)で、現金や、水なしで使える「ペーパー歯磨き」の常備を推奨。負傷してすぐに医療機関で診察を受けられない場合に、「添え木」として代用できる日用品を紹介している。
小銭も必要、能登地震で痛感
《昨今、キャッシュレス決済を使う方が多くなっていますが、機械の故障や災害等により使用できなくなることがあるので、現金を携帯しておきましょう》
Xにこう投稿したのは、同課特殊救助隊の久保田泰典巡査長(32)だ。現金以外の決済手段が増えるなか、この投稿は多くの反響を呼んだ。閲覧数を示す「インプレッション」は1300万、「いいね」も3万を超えている。
久保田さんは今年1月に発生した能登半島地震で被災地に派遣され、各地で停電が発生した状況を目の当たりにした。飲み物などの自動販売機で、現金は使えても電子マネーが使えない場面があったことから、現金を用意しておく必要性を痛感。Xに投稿したという。
目安は「1人1万円程度があれば、1週間は暮らせる」と久保田さん。小銭もまじえてファスナー付きポリ袋などに入れ、非常用持ち出し袋や、貴重品と一緒にしまっておくことを勧めている。
水がなくても使える歯磨き用品
断水して困るのは、飲食と、風呂・トイレだけではない。口腔(こうくう)のケアも忘れてはならない問題だ。
矢内雅樹巡査部長(42)はXで、シート状のものを指に巻き付けたり、はめたりして歯をぬぐう「ペーパー歯磨き」を備えとして持つよう推奨する。「使用期限が5年ほどのものもあり、スペースもとらずに軽いので、負担なく備えられるのでは」と話す。
矢内さんが実際に使ってみたところ、指にはめるものが使いやすかったというが、「それでも歯の隙間など指では届きにくいところもある。災害時に用意できるかは分からないが、マウスウオッシュなどがあればよりケアできる」と説明。その上で、「ペーパー歯磨きは手を口に入れて使うので、手の衛生状態にも注意を払ってもらえれば」と呼びかけている。
負傷時の添え木は新聞紙でも
災害時、負傷してもすぐに治療を受けられるとはかぎらない。骨折や捻挫をした場合、患部を固定するのに添え木(副子=ふくし)が必要になるが、常備している人はほとんどいないだろう。
そこで、同課特殊救助隊の具志陽介巡査長(31)は、Xで《利用できる身近なものをいくつか紹介します》として、段ボールや新聞紙、ビニール傘などとタオル、粘着テープを使って腕や脚を固定する方法を写真付きで紹介した。
大切なのは、硬い棒状になるものと、腕や脚に巻き付ける道具を見つけること。具志さんは「新聞紙はやわらかいのに…と思うかもしれないが、まとめて折りたためば結構な強度がある」と明かす。ただ「あくまで応急的なものなので、できるだけ早く医療機関で受診してほしい」と話している。(橋本昌宗)