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ようやく入居の仮設が3カ月で浸水 地震に続き能登豪雨で被災「正月は家で迎えたい…」

産経ニュース 2024年10月8日 7時0分

石川県の能登半島を襲った記録的豪雨では、元日の能登半島地震で自宅を失った被災者が生活する仮設住宅も、床上浸水や土砂が流れ込む被害などに見舞われた。県は再入居を前提とし、年内をめどに仮設住宅を復旧させる方針だが、度重なる自然災害に翻弄された被災者からは失意の声が漏れる。同県輪島市の茶平政昭さん(67)もその一人。入居から約3カ月で再び避難所生活となり、「正月は家で迎えたいが、どうなるのか」と気をもんでいる。

9月30日、輪島市宅田町の宅田町第2団地。茶平さんと妻の峰子さん(69)が復旧工事が始まるのを前に、ガスの閉栓作業に立ち会った。室内には家財道具をまとめた段ボールが山積。茶平さんは「また避難所に逆戻りだ」とつぶやいた。

同月21日の豪雨では、近くを流れる河原田川が氾濫。室内に1人でいた茶平さんが近所の住人に声をかけられた午前9時ごろには、敷地内はすでに膝の高さほどまで水につかっていた。「集会所の前は、茶色く濁った水が川のように流れていた」と振り返る。

水位はみるみるうちに上昇。車で市立輪島病院にいったん避難し、約20分後に仮設住宅に戻った頃には、水深は脚の付け根付近に達していた。何とか貴重品を持ち出して仮設住宅を後にする際には、腰の高さを超えており、同団地では142戸全てが床上浸水した。

最大震度7の地震が起きた元日、輪島市河井町の自宅は全壊。茶平さんは妻とともに避難所や2次避難先を転々とし、7月上旬に仮設住宅に入居したばかりだった。

宅田町第2団地は洪水浸水想定区域に位置するが、長年、市内に住む茶平さんによると、過去に浸水したことはなく「近くを川が流れている不安より、ようやく落ち着けるという喜びの方が大きかった」という。商業施設や病院が身近にあり、生活するには便利な場所だった。だが、予想だにしない豪雨災害によって、つかの間の平穏な暮らしは暗転した。

自宅はすでに公費解体を済ませたため、仮設住宅の復旧工事が終わるまで、またもや避難生活を送ることに。自宅を再建する将来像を描きあぐねているという茶平さん。「この先どうすればよいのか」と肩を落とした。

復旧後に再入居の方針

石川県によると、豪雨では、宅田町第2団地を含む輪島市と珠洲市の仮設住宅6カ所の計222戸が床上浸水。住民には復旧が完了した後に再入居してもらう方針で、順次、説明会を開いて周知を図った。

復旧工事は、床や壁を外して床下にたまった土砂を取り除き、室内の洗浄や消毒をした上で、内装を元に戻す-という工程で行われる見通し。「新築するのとほぼ変わらない」(県担当者)作業になるという。

さらに、壊れたスロープや手すりの補修、敷地内に流れ込んだ土砂や流木の撤去も必要となる。県は「工期を詰められるよう施工者と調整し、できるだけ早く復旧を進めたい」としている。(吉田智香)

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