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「防災の日」 元陸将補で千葉・四街道市危機管理監 沢畠博氏に災害への備えについて聞く

産経ニュース 2024年9月1日 10時3分

1日の「防災の日」を含む7日間(8月30日~9月5日)の防災週間の期間中、千葉県内でも各地で避難訓練や啓発イベントが繰り広げられる。自然災害が激甚化、局地化する中、個人の防災意識の向上や備えは欠かせない。災害による被害を最小限にとどめ、命と暮らしを守り抜くために、今何をすべきか。同県四街道市の危機管理監、沢畠博氏(69)に聞いた。

--東日本大震災発災時は浦安市の危機管理監だった

「就任から約半年後に震災に直面し、市の86%が液状化する被害に遭った。家が傾き、頭痛や吐き気といった症状が相次ぎ、子供たちの平衡感覚も狂った。液状化の街浦安というイメージを払拭したいという一心で復興、災害に強い街づくりに取り組んだ」

--災害に備えて個人がやるべきことは

「まずは住んでいる家の安全対策。これが自助の基本だ。それから、備蓄。最低でも3日間、できれば1週間自宅で生活できる水や食料のほか、情報ツールとして重要なスマートフォンの充電機器も含めた備蓄だ。避難する場合は自分だけ避難しないこと。高齢化社会の進展で必ず近所に1人では避難できない人がいる。みんなで助け合って、一緒に避難をする意識を持ってほしい」

--現代社会は近所との関係が希薄になった

「自治会をもっと活性化させないといけない。祭りなどのイベントを通じ、顔の見える関係を深めていくことが求められる。そして行政が、自治会の価値をしっかりと認めること。自治体側から意見や要望があれば受け入れ、災害被害があったときには、自治会を通じて地域の被害を確認してもらう。若者の自治会への関心が高まらないと、共助が働かない」

--行政が準備するべきことは

「簡易トイレの確保は重要なことの一つだ。衛生上、極めて重要であるということは当たり前だが、人としての尊厳に関わる問題である。トイレ対策なしに防災対策は成り立たない。能登半島地震の教訓から、職員の参集体制を事前に考えておくことも大切だ」

--近年の災害ではSNSが活躍している

「スマホを持っていない高齢者も多い。ATMのボタンが押せるのであれば、スマホは使えるはず。できる限り持つことを心掛けてもらいたい。市ではスマホの初級講座も実施しており、使い方がわからなければ、職員が直接メールの読み方などをレクチャーする」

--県内の災害で懸念されることは

「能登半島地震の教訓から言えば、房総半島は道路が寸断して孤立集落が相当出る可能性が高い。あらかじめ地域ごとに備蓄倉庫を作り、ヘリポートを設けるのも被害を抑える方法の一つだ」

--避難所運営で重要な要素は

「災害関連死の少しでも減らす上で、避難所は要だ。住民主体の組織の構築を急ぎ、避難所運営の体制を平時から整え、災害時の混乱を抑えなければならない。行政職員数は限られ、公助には限界があることに加え、住民主体であれば自然と助け合いも生まれる。市では避難所の担当を自治会で割り振った」

--行政は避難所にどう関わるべきか

「決して丸投げするわけではない。市ではそれぞれの避難所の担当職員を個人名で住民らに示し、定期的にコミュニケーションを図るようにしている。訓練にも参加し、会議をする場所も探す。実際に避難所が立ち上がった際は、体調不良者への対応や悩み、トラブルは全て市が引き受け、責任は行政が取る形にする」

(聞き手 松崎翼)

さわはた・ひろし

 茨城県出身。昭和52年防衛大学校卒業。平成22年に自衛隊を陸将補で退官し、浦安市の危機管理監に着任。東日本大震災の対応に追われた。29年から四街道市の危機管理監。県防災士会理事長なども務め、各地での講演活動にも精力的に取り組んでいる。好きな言葉は独立自尊。

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