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南海トラフ地震「一部割れケース」で高まる発生頻度は0・4% 過去には紀伊半島沖で発生

産経ニュース 2024年8月9日 22時46分

気象庁が8日に出した南海トラフ巨大地震の臨時情報では、九州から関東の広範囲でマグニチュード(M)8~9級の地震発生の可能性が高まっているとされる。発端となった震源は宮崎県沖の日向灘で、南海トラフ想定震源域の西端付近。南海トラフ沿いで想定震源域の一部が割れた後に大規模地震が確認された事例はなく、気象庁は地域や時期を限定せずに警戒を呼び掛けている。

政府の地震調査委員会は9日、東京都内で定例会合を開き、8日に日向灘で起きたM7・1の地震について、気象庁や国土地理院などのデータを基に分析した。平田直委員長(東京大名誉教授)は冒頭、「大規模地震の発生可能性が、平常時に比べて相対的に高まっている」と強調した。

気象庁は9日、日向灘で震度1以上の地震が計14回起きたと発表した。地震直後、豊後水道と和歌山県でM2・2の小さい揺れがそれぞれ発生。紀伊半島では多数の低周波地震も観測されたが、いずれも南海トラフとの関連は否定した。

気象庁が8日発表した「巨大地震注意」の臨時情報は、プレート境界の一部が壊れる「一部割れケース」に相当する。1904~2014年に世界で発生した大規模地震の分析で、巨大地震の規模を正しく扱える特徴を持つモーメントマグニチュード(Mw)で7以上の地震1437例のうち、震源50キロ以内で7日以内にMw8級以上の後発地震が起きたのは6例で、その発生確率は約0・4%。平時の確率約0・1%よりも高まり、平田委員長は8日に「地震学的には極めて高い確率」と指摘した。

一方、想定震源域の東側か西側が割れる「半割れケース」では、7日以内の発生頻度は103例のうち7例で、約6・8%と格段に高まる。今回は一部にとどまった。

過去には「半割れケース」で大規模地震の発生が確認されている。昭和19年12月の昭和東南海地震は三重県南東沖でM7・9の地震が発生し、2年後の21年12月に和歌山県南沖でM8の昭和南海地震が起きた。その約90年前の安政元(1854)年にはトラフ東側で安政東海地震が起きた32時間後、西側で安政南海地震が起きた。

政府は社会的な許容性を考慮して警戒期間を「1週間」としており、大規模地震がなければ15日までとなる。だが、気象庁が臨時情報を解除する見通しはなく、「警戒がトーンダウンする表現にはならない」(担当者)。

一般的にプレート型地震は、陸側プレートの下で海側プレートの引きずり込みに耐えられなくなった陸側プレートが跳ね上がることで起きる。一度起きればひずみは解消するが、隣接するプレートに影響を与える。

気象庁の担当者は9日、「一定の大規模地震が起きれば、それだけプレート(岩盤)境界に与える影響が大きい」として、離れた地域でも連動する可能性があることに注意を求めた。(市岡豊大、黒田悠希)

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