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予測不能の巨大地震にどう備えるべきか 大阪公立大の生田英輔教授 明解!公大ゼミ(3)

産経ニュース 2025年1月14日 14時0分

政府の地震調査委員会は5年前の発表で、南海トラフ沿いで30年以内にマグニチュード(M)8~9級の巨大地震が発生する確率を70~80%と予測した。最悪の場合、死者・行方不明者は約32万人に及ぶとの試算もある。6434人が犠牲となり、3人が行方不明となった阪神大震災から17日で30年。いつ起こるとも知れない地震災害に、どう備えるべきなのか。居住環境から防災のあり方を考える大阪公立大都市科学・防災研究センターの生田英輔教授に対策を尋ねた。

--巨大地震への備えとして、まずは何から始めるべきですか

「地震規模の大小によって対策が変わるわけではない。自分の生活エリアにどのような危険があるかを把握することが大事。自治体が公表するハザードマップに目を通し、自宅周辺における高潮や津波、洪水や土砂災害などに関するリスクを調べてほしい」

--ハザードマップは読んだことがあります。リスクの度合いに応じて色分けがされていますね。次に必要なことは何ですか

「それぞれの家庭の〝弱点〟を認識すること。例えば、介護が必要な高齢者や乳幼児がいる家庭では避難に時間を要する。防災バッグを用意したり、避難先や避難経路をあらかじめ想定しておくと、いざというときに迅速に移動できる。準備と想定を重ね、弱点を順番に潰すのが大切」

--ハード面ではどのような対策が必要でしょうか

「例えば、自宅が古い木造家屋の場合、倒壊リスクが高いかもしれない。本当なら耐震補強や建て替えが必要だったりもするが、家具を固定し、感震ブレーカーを導入して通電火災に備えるだけでも、生存率が大きく変わってくる。まずは可能な範囲で必要な手を打つことを勧めている」

--どれもすぐに始められることばかりですね

「それが大事なんだよ。難しいことを勧めて、取り組んでくれる人がいなければ意味がない。あとは地域や職場、学校などで実施される避難訓練にも参加してもらいたい。気軽な気持ちであっても、訓練に参加していれば、無意識のうちに避難経路を覚えるし、実は大きなメリットがある」

--数カ月に1度、もしくは年に1度程度しかない訓練に参加する際、どのような点を意識すべきですか

「避難手順や経路、避難先の確認のほか、特に危険な場所を覚えておいたり、消火器やAED(自動体外式除細動器)の使い方をマスターしたりしておけば、さらに良いですね」

--1年前に起きた能登半島地震では、復興途上の被災地を豪雨や土砂崩れが襲いました。こうした「複合災害」への備えについては、どうお考えですか

「台風や豪雨災害発生のリスクが高い夏や秋は、浸水被害や土砂災害が想定される場所近くへの避難は避ける。着替えや防水バッグ、かっぱを事前に用意しておくことなども大事。些細(ささい)なことでも負担は減る。水害はおおよその発生時期を予測できるはずなので」

--もちろん限界があるとはいえ、個人や家庭レベルでの備えが大切だということがよく分かりました

「それは何より。そして危険な場所からは早く逃げる。災害発生時には楽観的な考えを捨て、素直に臆病になってほしい。それが生き残る上で最も大事なことなのです」(聞き手 土屋宏剛)

いくた・えいすけ 昭和51年8月生まれ。兵庫県出身。大阪公立大都市科学・防災研究センター教授。趣味は防災グッズの収集。研究室にある段ボールの中には、出張先で購入したというグッズが山のように積まれている。「これ面白いですよ」と記者に披露した米国製の防災ヘルメットには、黄の塗装の上に緑のラインが彩られている。ど派手ヘルメットを前に「海外の商品は機能性だけでなく、おしゃれさもあって」と得意げだった。

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