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能登地震後も営業続けたスーパーもとや、浸水被害で休業 再起決意の社長「できることやる」

産経ニュース 2024年9月30日 10時25分

元日の能登半島地震で被災後も休まず営業を続けてきた石川県輪島市の町野町(まちのまち)地区にある唯一のスーパーマーケットが、21日の記録的豪雨で2メートル近く浸水し、休業を余儀なくされている。社長の本谷一知(かずとも)さん(46)は「1年に2度も大きな災害に遭うとは」と嘆きつつも再起を決意。地震発生から9カ月を控え、ボランティアの力を借りて復旧作業を本格化させている。

浸水で休業しているのは「スーパーもとや」。店内の柱や壁には浸水の跡が残り、泥まみれになった菓子やカップ麺、飲料が山積みになっている。足元は泥でぬかるみ、商品を陳列する大型の冷蔵棚は横倒しになったままだ。

そんな惨状の店に27日、日本航空高石川(同市)の野球部員らが姿を見せた。スコップで泥をすくい、次々に外へ運び出していく。本谷さんの次男(18)がOBという縁でボランティアの申し出があったという。「自分たちだけで片付けるには限界がある。多くの人に支えてもらい、ありがたい」と本谷さんは感謝を口にした。

21日の記録的豪雨では町野町地区を流れる町野川と鈴屋川が氾濫。すでに営業していた午前、茶色く濁った水が店に入り始め、みるみるうちに水かさを増した。客はいなかったため、本谷さんは従業員らと2階に避難したが、30分ほどで浸水は2メートル近くに達した。

「濁流の勢いはすさまじかった。さまざまなものが流され、店の車も浮かんでいた」と本谷さんは振り返る。水が引いて1階に下りると、流木が店のガラスを突き破り、店内の商品棚などは奥に押しやられていた。

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最大震度7の地震が起きた元日は、翌日の初売りを控えて休業日だった。激しい揺れで近所の家屋が倒壊し、本谷さんも救出作業を手伝った。店には懐中電灯などを求める客が訪れ、商品の水や紙おむつを集まった人に配った。店を育ててくれた地元の人に恩を返そうと、以来、一日も休むことなく営業を続けた。

地元を離れて避難生活を送った住民もいたが、7月までに地区内に仮設住宅が完成。人が戻ればニーズが高まるとみて、売り場を少し広げようと考えていた矢先に豪雨に見舞われた。度重なる災害に、本谷さんは「自宅再建をあきらめ、さらに人が減ってしまうのでは」と懸念を口にする。

地震後、「地元の人に将来も必要とされる店にしたい」との思いを原動力に日々を過ごしてきたという本谷さん。今回の豪雨被害では、地震を機に知り合った人たちがボランティアに駆け付け、泥で汚れるのもいとわず協力してくれている。

店は少しずつだが元の姿を取り戻し始めている。本谷さんは「できることからやるしかない」と汗をぬぐった。(吉田智香)

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