福井市で昭和61年、中学3年の女子生徒=当時(15)=が殺害された事件で懲役7年が確定し、服役した前川彰司さん(59)の再審公判に向けた裁判所と検察側、弁護側の3者協議が11日、名古屋高裁金沢支部で始まった。弁護側によると、検察側は改めて有罪を主張するか否かを明言しなかった一方、新たな証拠を提出しない方針で、前川さんの再審無罪の公算がより大きくなった。
協議では再審公判を来年3月に開き、即日結審する方針を確認した。前川さんを巡っては、同支部が10月、検察側が新たに開示した当時の捜査報告書などの新証拠が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」といえるとして再審開始を決定。再審公判は同じ裁判体が審理する。
弁護側によると、3者協議で検察側は、再審公判にこれまでの審理で出していない証拠を出すことはせず、弁護側が再審開始決定の根拠となった捜査報告書などを証拠採用するよう求めれば「同意する」と述べた。
前川さんは3者協議を受けて会見し、「早くに公判が開かれることはよかったが、(争う可能性がある)検察の姿勢は物足りない」と話した。
女子生徒は61年3月19日夜、福井市の市営団地で1人で留守番をしていた際に殺害された。「事件当夜に血の付いた前川さんを見た」といった複数の知人証言が有罪の根拠とされたが、開始決定は、警察が供述誘導を働きかけた疑いを指摘して信用性を否定した。