Infoseek 楽天

「苦労すっとんだ」 袴田さん無罪確定へ 共闘の姉ひで子さん、待ちわび半世紀超

産経ニュース 2024年10月8日 22時23分

静岡一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審無罪が8日、確定することになった。検察側は捜査機関による「証拠捏造」を認定した静岡地裁判決への不満をにじませながらも、控訴を断念した。発生から58年にわたり事件に翻弄され続けた袴田さんと、それを支え続けた姉のひで子さん(91)。2人は待ちわびた「真の自由」を、ついに手にすることになった。

「裁判が完全に終わるということで、とてもうれしい」

検察が控訴断念を表明したと聞いたひで子さんは8日午後、笑顔を見せ、「58年の苦労がすっ飛んじゃった」と語った。

袴田さんは昭和41年の逮捕から平成26年に静岡地裁が再審開始を認めて釈放されるまでの約48年の間、東京拘置所などで拘束された。

逮捕直後から無罪を信じ続けたひで子さんは、長期拘束の影響で意思疎通が困難だとして出廷を免除された袴田さんの代わりに再審公判に出廷。初公判では「どうぞ弟に真の自由をお与えください」、最終意見陳述でも「巌を人間らしく過ごさせてくださるよう、お願い申し上げます」と無罪を訴えてきた。

先月26日の無罪判決は証言台で言い渡しを聞き、思わず目元をハンカチで押さえた。

袴田さんの釈放後、姉弟2人で暮らし始めて10年。変化もある。再審無罪判決の3日後、支援者の前に姿を現した袴田さんは、こう語った。

「待ち切れない言葉でありましたが、無罪勝利が完全に実りました」

それまで理解が難しい言動の多かった袴田さんの理路整然とした発言は、周囲を驚かせた。

「多くは望まないが、巌にはもう少し長生きしてほしい」とひで子さん。最近は「なんとなく生き生きしている」という弟との静かな暮らしは、これからも続いていく。(滝口亜希、橘川玲奈)

この記事の関連ニュース