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元検事正起訴の検察、初めて事件概要を公表 対応一転に評価分かれる

産経ニュース 2024年7月12日 21時38分

元大阪地検検事正の弁護士、北川健太郎被告(64)が12日に準強制性交罪で起訴された事件。捜査の主体となった大阪高検は、被害者のプライバシー保護を理由に事件の概要をこれまで一切説明してこなかったが、起訴にあたって対応を一転。発生日や場所などの詳細を初めて公表した。専門家からは一連の対応に理解を示す見解がある一方で、「後手」との批判もあがった。

「元大阪地方検察庁検事正に係る刑事事件の処理について(公表)」。12日午後3時過ぎ、大阪高検はこう題した文書を報道各社に配布した。文書には被告の起訴に加え、事件発生日や場所といった起訴内容の概要が記載されていた。

大阪高検が北川被告を逮捕した6月25日に配布した文書には、名前や職業などの記載があるのみで、通常設けられる報道各社を集めての説明の場もなかった。こうした対応に検察内部からも「身内に甘いと言われても仕方ない」と疑問視する声が出ていた。

一方、この日は、逮捕時になかった説明会を実施。約20分にわたって高検の小橋常和次席検事が報道陣の質問に答え、被害者が当時の部下であることや、事前に複数人で飲食店で酒を飲んでいたといった経緯を明かした。

逮捕時と対応が異なる理由を問われると、小橋次席は「今後の公判で一定の事実が明らかになるため」と説明。これまでの対応に批判的な意見や報道が多くあったことを踏まえてか「可及的速やかに捜査しており、いわゆる隠蔽と言われることは一切なかった」と語気を強める場面もあった。

高検の一連の対応について、事件捜査に詳しい近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「逮捕段階で被害者保護を優先したのはやむを得ない」と理解を示す。逮捕の時点では不起訴になる可能性が残っており、公の法廷で審理されるかどうかが分からないからだ。

「公の場で被告の罪を追及すると決めた以上、被害者保護に配慮しながらも説明責任を果たすべき段階。逮捕時と状況が異なり、妥当な判断だ」と評価する。

一方、東京地検特捜部の副部長などを歴任した検察OBの若狭勝弁護士は「元検事正を逮捕する以上、相当な証拠がなければできない。ましてや約6年前の事件。起訴する可能性は極めて高かったはずで『起訴したから説明する』というのは詭弁(きべん)だ」と批判する。「説明を避けることでさまざまな憶測を呼び、痛くもない腹を探られることもある」として、組織の危機管理に疑問を呈した。

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