衆院選と同日の10月27日に実施された最高裁判所裁判官の「国民審査」で、対象となった6人全員が信任された。うち4人は罷免を求める割合(不信任率)が10%を超えるなど、24年ぶりの高水準となった。速報値を分析すると、首都圏の不信任率が上がる一方、裁判官ごとの差は縮小しているといった傾向が見えてきた。
不信任10%超えが6人中4人
国民審査は、最高裁の裁判官が職責にふさわしいかを有権者が判断する仕組み。任命後初の衆院選で審査を受ける。罷免を求める票が有効投票の過半数となった裁判官は罷免されるが、これまでに例はない。
総務省の速報値によると、投票率は53・64%で、前回(令和3年10月)から2・05ポイント減となった。
不信任率が最も高かったのは、最高裁長官を務める今崎幸彦氏の11・46%。尾島明氏(11・00%)、宮川美津子氏(10・52%)、石兼公博氏(10・01%)が続いた。
不信任率が10%を超える裁判官が出たのは、平成12年以来だ。
今年8月以降に就任したばかりの平木正洋氏(9・97%)、中村慎氏(9・82%)は10%を下回ったが、6人の平均は10・46%。前回平均(6・78%)を上回った。
就任が早い順に不信任率が高い傾向にあった。
不信任率が全国トップは沖縄県
都道府県ごとに前回の結果と比較すると、首都圏などで罷免を求める票が増えているのがわかる。
東京都は前回比で1・63倍となったほか、神奈川県(1・75倍)、千葉県(1・73倍)、埼玉県(1・67倍)も罷免票が伸びた。
中でも今崎氏は、この地域で平均を上回る不信任率となった。
今崎氏は性同一性障害の職員のトイレ使用を制限した国の対応を「違法」とした判決で裁判長を務めたほか、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するための手術要件を違憲とした大法廷決定に判事として関わった。
6人全体の不信任率が全国で最も高かったのは沖縄県(17・60%)、次いで東京都(14・88%)で、この順位は前回と変わっていない。都道府県ごとのばらつきは、前回から広がった。
一方、裁判官ごとのばらつきは前回よりも縮小。前回の各人の不信任率は最大で1・90ポイント差だったが、今回は1・64ポイント差だった。
司法関係者は「メディアの報道などで国民審査の認知度が上がったことが影響した可能性がある」としている。(滝口亜希)