秘書らに香典を配布させた公選法違反罪と、自民党の派閥パーティー収入を政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反罪で堀井学元衆院議員(52)=28日辞職=が東京地検特捜部に略式起訴された。五輪メダリストから転身して4期目の中堅議員が違法行為に傾注していったのは、衆院選の選挙区での敗北と古参秘書との決裂がきっかけだった。
「私が自民党の安倍派で一番潔白」
昨年12月、堀井氏は産経新聞の取材に対し、そう胸を張った。
当時は、自民党最大派閥の安倍派を中心に派閥から還流されたパーティー収入が派閥や議員側の収支報告書に記載されなかった疑いが浮上したばかり。だが、堀井氏は「秘書がどのように処理していたかですよね」と責任転嫁を繰り返した。
その後、堀井氏の不記載額は5年間で2196万円だったと判明した。今年7月、特捜部が公選法違反容疑で関係先を捜索。特捜部の任意聴取に堀井氏は不記載の認識があったと認めたという。一部は香典の原資になった可能性がある。
惜敗後にかつら
堀井氏は平成6年のリレハンメル五輪のスピードスケート競技で銅メダルを獲得し、引退後に北海道議に転身。24年の衆院選で初当選した。
だが、令和3年10月の衆院選では、過去の選挙で2倍近くの得票差で勝利してきたライバル候補に小選挙区で惜敗。比例復活したものの、間もなく、古参秘書らが相次いで事務所を去り、政治活動は変質していった。
イメージ重視に切り替え、トレードマークのスキンヘッドから、かつら姿のソフトな印象を前面に出すように。地元有権者との対話は激減した。
支援者は「地元の人を置き去りにして完全に迷走していた。失望した」と憤る。元秘書は「選挙に敗れて誰の意見にも耳を貸さなくなっていった」と話す。
忠告を意に介さず
香典の代理配布が始まったのは、敗北と前後した令和3年10月だった。
《亡くなられた方が自民党、地域後援会役員、私との長い関係があれば大丈夫》
堀井氏は4年2月、通信アプリ「LINE(ライン)」で、新しい秘書らに、そう促した。
議員名義の香典を本人以外が有権者に配るのは違法だ。3年6月には菅原一秀元経済産業相が同様の罪で立件され、違法性は周知の事実だった。
秘書は刑事罰の可能性も指摘したが、堀井氏は《もう15年も、そうしてきた》《熱くならないで》と意に介さなかった。
「私の順法精神の欠如が原因」。辞職にあたり、そうコメントした堀井氏。事務所関係者は「何を考えているか分からない」と天を仰いだ。(桑波田仰太、久原昂也、星直人)