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輸出規制の解釈、捜査の妥当性で依然争い 大川原化工機国賠訴訟が25日に結審の見通し

産経ニュース 2024年12月24日 21時25分

外為法違反罪などに問われ、後に起訴が取り消された精密機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の社長らが東京都と国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審は25日、東京高裁(太田晃詳裁判長)で双方が最後の口頭弁論に臨み、結審する見通しだ。証人尋問では1審に続き、現職警察官が捜査を批判した一方、都と国側は捜査は適正だったと主張。輸出規制に関する省令の解釈も焦点となる。

社長ら3人は生物兵器に転用できる噴霧乾燥機を不正輸出したとして令和2年に逮捕、起訴された。同社側は実験を70回以上行い反論。東京地検は3年、同社製品が規制対象にあたるか「疑義が生じた」と起訴を取り消した。1審東京地裁は5年12月、警視庁と地検の捜査を違法と認定し、国と都に計約1億6000万円の賠償を命じた。

公安部が「解釈ねじ曲げさせた」

控訴審の争点の一つが、輸出規制に関する経済産業省令の解釈だ。省令は「内部の滅菌または殺菌ができるもの」を規制対象としているが、その定義は明確ではない。

1審判決は、警視庁公安部が「殺菌方法には乾熱殺菌が含まれ、1種類でも菌を死滅させられれば該当する」という解釈を採用したことは、事前に経産省に確認しており不合理とはいえないと判断。その上で、同社製品の内部温度に関する捜査が不十分なまま行われた逮捕・起訴は違法だったとした。

控訴審で原告側は、公安部と経産省の打ち合わせメモを新証拠として提出。解釈に否定的だった経産省に公安部が働きかけて「見解をねじ曲げさせた」とし、この解釈を採用したこと自体が違法だったと主張している。

一方の都側は、メモの証拠能力については争っていないものの「殺菌の解釈が恣意的に作り上げられたことはなく、公安部が働きかけた事実もない」と反論している。

現職警察官が捜査批判

もう一つの争点は、同社元取締役への取り調べが適正だったかだ。1審は、公安部が元取締役に「殺菌」の解釈を誤解させた上で取り調べを行い、違法だと判断した。

控訴審では、取り調べに立ち会った男性巡査部長が、元取締役は調書を確認した上で署名押印しており「誤解させるような取り調べはなかった」と証言。都側も、社内で最も規制に詳しい元取締役が規制の重要事項について誤解することはあり得ないと主張した。

これに対し原告側は、巡査部長の証言は巡査部長が記したノートの記載と矛盾すると主張。都側は、ノートは何者かが無断で持ち出した違法収集証拠だと批判している。

法廷では、捜査への批判も出た。原告側の証人として出廷した男性警部補は捜査の進め方に「問題があった」とし「組織としても日本の安全を考える上でも立件する理由はなかった」と述べた。

公安部に捜査指導官設置

大川原化工機の起訴取り消しを巡り警視庁は、公安部に捜査指導官を置き証拠の吟味について評価するとともに、幹部の研修を充実させ、指揮能力の向上を図っていることを明らかにした。

今月19日に開かれた記者会見で中島寛公安部長は、国家賠償請求訴訟で証人として出廷した捜査員が「事件は捏造」と証言した点について「捏造とされる事実はない」とした上で「公訴が取り消しになったことは真摯に受け止めている」と述べた。

捜査に当たったのは外事1課だったが、令和3年7月の起訴取り消し直後、当時の課長が捜査の問題点を検証するため捜査員を対象に匿名のアンケートを実施。一部報道で「課長が警察庁幹部に叱責され、アンケートの回答を廃棄した」とあったが「幹部からの叱責や指示により廃棄した事実はない」とした。

アンケートは2代後の課長まで引き継ぎ、課の組織運営や業務管理に活用。「結果を読むのは課長のみにしてほしい」という一部の捜査員からの要望や、国家賠償請求訴訟で事実関係の整理が進んだため、作成から約1年後に廃棄したとした。(大渡美咲)

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