和歌山市の漁港で令和5年4月、岸田文雄前首相の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で、殺人未遂罪などに問われた無職、木村隆二被告(25)の裁判員裁判の論告求刑公判が10日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で開かれた。検察側は「現職総理を狙い、周囲の人を無差別に巻き込んだ悪質なテロ行為だ」として懲役15年を求刑した。
弁護側は殺意を否認し、傷害罪にとどまると主張。爆発物の威力を踏まえ、被告に人が死ぬ危険性の認識があったといえるかが主な争点となっている。
論告で検察側は、被告が自作した爆発物は部品が約60メートル先のコンテナにめり込むほどの威力があり、鑑定した専門家も証人尋問で殺傷能力を認めたとして「殺意があったことは明らか」と指摘。「民主主義の根幹を揺るがす犯行」と述べた。
これまでの公判で、弁護側は要人を狙ったテロとの見方を否定。6日の被告人質問で被告は、選挙制度への持論を発信するために「有名人の近くで大きな音が鳴れば注目が集まると思った」と動機を述べた。
事件前月に爆発の程度を確認する実験をし、「誰もけがをするとは思わなかった」と危害を加える意図を改めて否定。「結果的にけがをさせてしまい、申し訳ない」と謝罪の言葉も口にしていた。