「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に致死量の覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判の第19回公判が8日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で開かれた。被告人質問が始まり、被告はモデル仲間から「お金持ちの男性を紹介してあげようか」と言われ、野崎さんと知り合ったと述べた。
被告が無罪を主張し、犯人性が争点となる中、これまでに28人の証人尋問を実施。被告人質問はこの日から3日間予定されており、長期審理は終盤を迎えている。
被告人質問は、野崎さんと出会った経緯から始まった。被告の説明では、モデルの仕事で中国・北京に行った際、モデル仲間に「お金持ちの男性を紹介してあげようか」と言われ、野崎さんの知人を紹介されたという。野崎さんと被告は平成29年末に出会い、翌年2月に月100万円を支払う条件で結婚する。
検察側は冒頭陳述で、離婚の危機を感じた被告が「莫大(ばくだい)な遺産を得るために完全犯罪をたくらんだ」と指摘。「完全犯罪」「覚醒剤」などと検索していた上、犯行時間帯に被告と野崎さんは2人きりで、野崎さんの遺体が見つかった2階へ少なくとも8回行き来していたと指摘した。
野崎さんが経営していた会社の元従業員ら複数人は法廷で「野崎さんは被告の態度に不満を募らせ、離婚を求めていた」と証言した。
一方、被告は初公判で「私は殺していません」と述べた。弁護側は被告が切り出した離婚話を野崎さんが引きとめたこともあったとし、被告以外が飲ませたり、野崎さんが自ら飲んだりした可能性に言及している。