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不自然さ問う検察側の追及に数秒間の沈黙…ドンファン元妻「わかんないです」  紀州のドンファン公判 被告人質問詳報

産経ニュース 2024年11月12日 7時0分

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に致死量の覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判は11日午後、検察側の被告人質問が行われた。午前中の弁護側の質問には、自身の潔白を饒舌(じょうぜつ)に語っていた被告。検察側から被告の説明と事実との齟齬(そご)を指摘されると、しばらく沈黙した後に答える場面も複数回あった。

覚醒剤の購入依頼

検察側がまず取り上げたのは、野崎さんから覚醒剤の購入を依頼されたことがあるとする被告の供述。被告の説明によると、野崎さんが死亡する前月の平成30年4月1日、野崎さんから「覚醒剤でも買ってきてくれないか」と20万円を渡された。しばらくは放置し、いったん20万円はATMに入金したが、後日、催促されたため、インターネットで見つけた密売人と連絡を取ったという。

検察官「20万円は」

被告「受け取ってわりとすぐ入金した」

検察官「時間は」

被告「覚えていないが受け取った日の夜になると思います」

ここで検察側は入金記録を示す。そこには確かに4月1日にコンビニATMで20万円を入金した記録があったが、時間は午後2時58分となっていた。「夜」とはいえない時間で、被告の説明とは食い違う。これを受け、被告はすぐに日付を修正する。

被告「1日の昼に入金しているのであれば、(受け取ったのは前月)31日の夜になります」

「人殺し扱いだった」

検察側は追及を強める。

検察官「勘違いか」

被告「記憶が混ざっていた」

検察官「この20万円は交通費ではないのか」

被告「交通費は社長(野崎さん)が直接払っていたので、交通費ということはないです」

検察官「これ以外に覚醒剤の購入を頼まれたことは」

被告「これだけです」

検察官「野崎さんが覚醒剤を使ったり持っていたりするのを見たことは」

被告「ないです」

野崎さんの死亡から約3年後に逮捕された被告。捜査段階では、この購入依頼の話をしていなかったという。

検察官「なぜ」

被告「言ったらどうなるか分からなかった。人殺し扱いだったし、言ったらどうなるか怖くて」

検察官「説明すればよかった」

被告「信じてもらえるとは思わなかった。刑事たちの間でストーリーができているんだなと思って言えなかった」

検察官「(任意で捜査を受けていた時期に)弁護士に警察との間に入ってもらっていた。そのときは」

被告「弁護士にも言っていません」

「パパ活みたいなことを普通は言わない」

この日も上下黒のスーツ姿で出廷した被告。質問する検察官へまっすぐ視線を向け、ときに質問を咀嚼(そしゃく)するようにうなずきながら聞く。

野崎さんと被告は30年2月に結婚。被告は家族や友人に結婚を知らせていなかったが、その理由を「契約みたいな結婚で、愛し合ってする結婚ではないので」と語っていた。

検察官「周囲に結婚したことを言ってもよかったのでは」

被告「えっ。そんな普通の結婚ではないので、言い触らすものではない」

検察官「あなたは友人からお金持ちだと思われていた。そのキャラというか評価を崩したくないと思ったのでは」

被告「パパ活みたいなことを普通は言わないと思います。バレなければいいと」

検察官「何をバレなければいいと」

被告「『パパ』がいることを」

亡くなった当日、被告は…

検察側が続いて言及したのは、野崎さんが死亡した当日(30年5月24日)の被告の行動だ。検察側は冒頭陳述で、犯行時間が午後4時50分から午後8時ごろとした上、被告のスマートフォンの健康管理アプリには、この間、野崎さんが死亡していた2階へ8回上がった記録があると指摘していた。

この記録について弁護側の質問には、「2階と1階との行き来は日常茶飯事なので覚えていない」と述べていた。

検察官「日常茶飯事ということは8回の行き来は不自然ではない」

被告「そうです」

検察官「本当に?」

被告「はい」

検察側は、同年4月20日~同年5月23日(死亡前日)の同時間帯のアプリの記録を示す。0回が12日で最も多く、1回が8日で続く。全ての日に野崎さん宅に滞在していたわけではないが、8回は一度もなく、5回と6回もそれぞれ1日しかなかった。

検察官「8回は不自然ではないか」

被告「5回であれば、3回しか違わない」

こうした回答を予想していたかのように、検察側は説明を追加する。5回と6回の記録があった日、被告は車の教習所に通っており、教習所での滞在時間を除けば回数は2~3回に減るというのだ。

証言台で直立

一連の質問の中で、検察側は野崎さん宅の階段の勾配を尋ね、被告は「今まで上った階段と比べても『急だな』という印象」と答えていた。検察側の質問には、負担がかかるだけに連続して上り下りすれば記憶に強く残りうることを示す狙いがあったとみられる。

検察官「(死亡日以外は)最大でも3回。8回は不自然では」

被告「多いなって思います」

検察官「なぜ多いか分からないか」

被告「うーん。(数秒間沈黙した後に)わかんないです」

検察官「(8回は)日常ではないのでは」

被告「うん」

検察官「頑張って理由を思い出せないか」

被告「思い出せない。普段は1階にバッグを置いているが、2階に置くこともある。そのときはバッグの中身を取りに行くのに回数が多くなっちゃったのかな」

検察側の質問の途中でこの日は閉廷。15日に3日目の被告人質問が行われる。被告は裁判員が法廷から出ていくのを、証言台の前から動くことなく直立で見送り、最後に一礼。その後、自らも法廷を後にした。

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