東京五輪の大会運営を巡る談合事件で30日、東京地裁は広告界最大手の電通が中心的な役割を果たしたと認定した。公判では談合の範囲を巡り、テスト大会の計画立案業務の約5億円分にすぎないと主張する電通側と、範囲が本大会の運営業務などにも及び契約額は数十倍の計約437億円分に上るとする検察側が対立。地裁は検察側の主張を全面的に認めた。
テスト大会での計画立案業務をそれぞれの競技場で受注するよう談合した企業が、その後のテスト大会の運営や本大会の運営も担うことまで談合していたかが焦点となった。関連会合に参加した関係者の供述と議事録につじつまが合わない点があり、双方の信用性が争われた。
判決で決め手の一つとされたのは、企業への役務の発注など調達全般を担う大会組織委員会の調達部長の供述だった。
調達部長は平成29年10月の打ち合わせで、組織委大会運営局元次長から「計画立案業務の事業者選定は、本大会の運営を見据えて行うことが重要」と説明されたと証言。30年1月には、本大会などの運営業務は計画立案業務の受注企業に随意契約で発注することになると「認識していた」と説明し、談合の対象に本大会も含まれていたとする見解を示した。
一方、一連の説明と矛盾する議事録もあった。電通側は、議事録を基に、逸見晃治被告らが出席した30年1月の会合で元次長が「本大会の運営業務は入札になる可能性がある」と告げたとし、談合が本大会には及んでいない根拠とした。
判決理由で安永健次裁判長は、調達部長らの供述が「自然で合理的で十分に信用できる」とする一方、電通が引用した議事録には、事実と明らかに違う誤記があったと指摘。「会議内容を正確に把握、理解した者による記載とは到底認められない」とした。(桑波田仰太、久原昂也、星直人)