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「1950年代、米国では黙殺された」 世界的画家、白髪一雄のシンポ開催 国際的評価の秘密をさぐる

産経ニュース 2024年8月30日 6時0分

世界的な抽象画家、白髪一雄(1924~2008年)の生誕100年を記念したシンポジウム「SHIRAGAを語る」が尼崎市内で開かれ、平井章一氏(関西大学文学部教授)、大島徹也氏(多摩美術大学芸術学科教授)、ナミコ・クニモト氏(オハイオ州立大学美術史学科准教授)の国内外3人の専門家が国際的評価や作品の魅力について語り合った。

白髪は天井からつるしたロープにつかまり、足で絵を描いた前衛画家として世界にその名を知られている。尼崎の呉服店に生まれた白髪は、生涯をこの地で過ごした。京都市立絵画専門学校(現京都市立芸術大)で日本画を専攻。卒業後、洋画に取り組み、前衛の神様といわれた吉原治良に出会い、「具体美術協会(具体)」に入り、独特の足で描くという画法で頭角を現した。

シンポジウムでは、まず最初に、1950年代の初期の評価について、平井氏は「フランスの著名な評論家、ミシェル・タピエによってヨーロッパを中心に広がった」と説明、大島氏は「米国では白髪を含む具体美術協会の展覧会が開かれたが、評論家からは酷評、黙殺された」と紹介した。2000年代に急速に米国でも評価が高まったことについて、クニモト氏は「世界のグローバル化で西洋以外の地域も注目され、平等になった」と指摘、大島氏は「欧米の権威ある評論家、イヴ=アラン・ボアとロザリンド・クラウスが白髪を取り上げたことで無視できなくなった」と分析した。

作品の魅力については、クニモト氏は作品タイトルに中国・明王朝時代に書かれた物語「水滸伝」から引用されていることをあげ、「物静かで内向的だった白髪は英雄的な人物の攻撃性、暴力性への関心があった。絵の具の飛沫は暴力性を連想させる」と指摘した。また作品の日本的なものについては、大島氏は「作品には安易なジャポニスムではなく、それ以上のものがある。アクションには能の所作、空手の型のようなものも感じられる」、クニモト氏は「むしろ日本的なものについて注意深く扱い、歴史にも深くアプローチしていた」と語り、平井氏は「書的な絵画空間、余白のある画面といった独自の美学があった」と分析した。

現在、「生誕100年 白髪一雄 行為にこそ総てをかけて」が尼崎市総合文化センター(同市昭和通)で開催中。9月23日まで(火曜日休館)。

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