動物の死や暴力シーンなど、見たい映画に自分の苦手な描写があるのか調べられるサイト「milma.jp」(ミルマ)がサービスを開始し、話題を呼んでいる。「誰もが安心して作品を楽しめるように」という趣旨のサービス。今のところネタバレや表現規制への懸念の声は少なく、肯定的な反響が多いようだ。
100の「地雷」をチェック
ミルマは現在、海外や日本の映画、配信ドラマなど約5000本の作品を掲載。利用者は、各作品で「犬が死ぬ」「誰かが高所から落ちる」「突然大きな音がする」など約100の「トリガー」について有無を調べたり、自分で情報を投稿したりできる。
同サイトは、米のサイト「DoesTheDogDie.com」と提携し、フォーマットを日本向けにローカライズしたもの。ミルマの運営会社「エクラン」の本田敬代表取締役は、「私もある映画の拷問シーンで気分が悪くなり、劇場を出たことがあった。『DoesTheDogー』を知り、日本にもこんなサイトがあれば、みんなが映画と〝不幸な出会い〟をせずに楽しめると思った」と話す。
さまざまな不安、恐怖
ミルマでは、利用者は自分にとっての「地雷」表現を、新着、映画名検索、トリガー一覧の3つから探すことができる。
トリガー一覧には「児童虐待がある」「ヌードシーンがある」「反ユダヤ主義がある」「同性愛者への誹謗中傷表現」などの項目が並ぶ。
さらに「ピエロがいる」「誰かが嘔吐する」や、人形やロボットなど人間そっくりのものへの恐怖を示す「オートマトノフォビアがある」、登場人物が鑑賞者に話しかける表現が苦手な人向けの「第4の壁が壊される」という項目も。さまざまな恐怖や不安を抱えて映画を見ている人がいることが分かる。
本田さんは「トリガーは米サイトのものを一部抜粋して掲載した。今後は『津波の場面がある』など、日本特有のトリガーも用意していきたい」としている。
「”地図”として使ってほしい」
10月20日の正式オープンから、ミルマにはさまざまな意見が寄せられた。Xでは「便利だ」「映画はたくさん見るけど苦手な表現はある」といった肯定的な意見が大半だ。中には「好きな表現を見つける手段にもなる」という意見も。
「『表現規制を助長する』といった批判が多いかと思ったので意外だった」と本田さんは安堵の様子。
作る側からすると、ネタバレや表現の規制への懸念を持つ人もいそうだ。しかし、映画監督の平山秀幸さんは、「カレーに入っているニンジンが嫌いなら無理して食べなくていい。それでカレー自体が否定されはしない。映画はそんなにヤワな文化ではない」と否定的にはとらえていない。そして、「本当に力のある作品なら、嫌な表現を越えて感動が伝わるはず」と強調した。
本田さんは、「トリガーの有無で作品を評価したいのではなく、いわば『地図』。苦手な表現を避けるために利用するなり、あえて目指すなり、自由に使ってほしい」と話している。
(岡本耕治)