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<朝晴れエッセー>JKの香り

産経ニュース 2024年8月2日 5時0分

社会人の長女が誕生日祝いにくれたのは、JK(女子高生)の香りがするとSNSで話題のボディソープだった。オヤジにJKとは「冗談がきつい」。

私にとってJKとは40年前、同じバスに乗り合わせていた、夏の制服で有名な女子校の生徒たちだったのかなと思うのだが、不思議と香りの記憶がない。香り云々の距離感ではなかったともいえるが、思い出を美しく保存するのには不要なのかもしれない。

使用説明を読むと、気になる部分には手で泡立てて直接塗り込むようにとある。オヤジ臭の手強さを思い知らされ、くじけそうになったが、玉手箱を開けるような気持ちで開栓した。

浴室に、爽やかとしかいいようのない香りが広がる。昭和のトニックシャンプーとは違う「純粋で清らか」な感じが、洗い流しても残っている。

湯船に浸かって目をつぶると、40年前の記憶に香りが上書きされていくようだった。

風呂からあがると、娘たちがJKオヤジの登場に大騒ぎしていた。嗅ぎにくるか、と誘ってやったのにつれない高校生の息子だけが、まともだった。

束の間青い日に帰ることができた。「実は気のきいた」プレゼントだったと感謝したい。

岩崎祐史(55) 兵庫県西宮市

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