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3年ぶり日本人のノーベル賞受賞あるか、自然科学系は有力 7日から連日発表

産経ニュース 2024年10月5日 21時53分

今年のノーベル賞受賞者が7日から順次、発表される。多くの日本人受賞者を生み出してきた自然科学分野で3年ぶりの吉報が待ち望まれるほか、文学賞では村上春樹さんらが注目されている。各賞の動向を分析した。

生理学・医学賞は森和俊氏ら有力

生理学・医学賞では、生命活動に重要なタンパク質の品質管理を担う細胞内の仕組みを解明した京都大の森和俊特別教授(66)が有力視される。ノーベル賞の登竜門と評される世界的な賞を複数受賞し、がんや糖尿病をはじめとした疾患の治療につながると期待される。

ヒトなどの多細胞生物に欠かせない細胞接着分子を見つけた理化学研究所の竹市雅俊名誉研究員(80)、免疫を抑制する細胞を発見し、自己免疫疾患の新たな治療法に道を開いた大阪大の坂口志文特任教授(73)も有望。睡眠を制御する脳内物質を発見し、不眠症などの治療につなげた筑波大の柳沢正史教授(64)も無視できない。

物理学賞は佐川真人らに注目

物理学賞は大同特殊鋼の佐川真人顧問(81)が注目される。世界最強となるネオジム磁石を発明。電子機器の小型化や省エネに貢献し、風力発電や電気自動車などに用途を広げている。

光ファイバー通信網に使われる光信号の増幅器を開発し、インターネットの普及に貢献した東北大の中沢正隆特別栄誉教授(72)や、「ペロブスカイト」と呼ばれる構造の物質を使った次世代太陽電池を開発した桐蔭横浜大の宮坂力特任教授(71)らも目が離せない。宮坂氏は化学賞での受賞も期待される。

化学賞には北川進氏らの名が挙がる

化学賞では京都大の北川進特別教授(73)が挙げられる。微細な穴を無数に持つ「多孔性材料」を開発。二酸化炭素をはじめとした気体の吸着や分離が自在で、環境問題への応用も進む。

東京大の藤田誠卓越教授(67)は分子が自発的に集まる「自己組織化」で新物質を作製し、物質の構造解析にも応用する「結晶スポンジ法」を開発した。

岡山大の沈建仁(しんけんじん)教授(62)や大阪公立大の神谷信夫特別招へい教授(71)は、植物の光合成に不可欠な物質を解明。人工光合成に道を開き、資源やエネルギーなどの問題解決に向けた貢献が評価されている。

文学賞、2番人気は村上春樹さん

文学賞の有力候補として毎年名前が取り沙汰されるのが「ノルウェイの森」「1Q84」などの小説で知られる人気作家、村上春樹さん(75)。作品は50を超す言語に翻訳されており、チェコのフランツ・カフカ賞をはじめ権威のある国際的な文学賞も受けてきた。日本人で30年ぶり3人目となる栄誉を射止められるか注目される。

英国のブックメーカー(賭け屋)ラドブロークスの受賞者予想で村上さんは2番人気。日本人では先鋭的な文体で知られる金井美恵子さん(76)とドイツ在住の多和田葉子さん(64)も予想リストに入った。賭けの人気と実際の受賞者は必ずしも一致しないが、予想にはほかに、中国の作家である残雪氏らの名前が挙がっている。

経済学賞は初受賞なるか

経済学賞については、これまで日本人が選出された例がない。初の受賞者候補としてたびたび名前が挙がるのは、米プリンストン大の清滝信宏教授(69)だ。

マクロ経済学が専門。英経済学者のジョン・ムーア氏とともに、土地や建物などの担保価値が落ちると、銀行の融資が減り、企業の設備投資が細り不況へとつながっていく仕組みを解明した「清滝・ムーアモデル」で知られる。

2008年のリーマン・ショックの際は、不況の長期化を防ぐための金融・財政政策のヒントになった。公的資金を自動車メーカーや金融機関に投入することで、傷口の拡大を防いだとされる。

選挙イヤーの平和賞は?

ノーベル平和賞ウオッチャーとして知られる国際平和研究所(ノルウェー)のウーダル所長は3日に自らの受賞予想を発表した。最有力候補として、自由と公正な選挙を確保するための監視団派遣などを手がける欧州安全保障協力機構の民主制度・人権事務所(ODIHR)を挙げた。

ウーダル氏は、独裁政権の台頭により、「世界で民主主義が圧力にさらされている」と危惧。今年が米国の大統領選など大型選挙が集中する「歴史的な選挙イヤー」であることに触れた上で、ODIHRが展開する選挙監視や選挙に関する立法支援といった活動を高く評価した。

また、ウーダル氏は戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで人道支援活動などを行っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)や、イスラエルにジェノサイド(民族大量虐殺)を防ぐ措置を命じた国際司法裁判所(ICJ)を候補として挙げた。

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