常陸の国で生まれた戦国時代の画僧で、江戸時代の狩野派や尾形光琳らに多大な影響を与えたとされる雪村周継(しゅうけい)の水墨画の名品約110点を紹介する特別展「雪村-常陸に生まれし遊歴の画僧-」が2月15日から4月6日まで、茨城県立歴史館(水戸市)で開催される。同館は「いまなお国境を越えて多くの人を魅了する作品の数々を鑑賞してほしい」としている。
東国で活動、独自の画境切り開く
県立歴史館の開館50周年記念特別展として開催される。同館によると、雪村は室町時代末期、常陸の国の部垂(=へたれ、現在の常陸大宮市)で、常陸北部を領した佐竹氏の一族として生まれたと伝わる。
幼くして出家し、太田(現在の常陸太田市)の正宗寺などで画業の修練を重ね、後に会津や小田原、鎌倉を訪れて画才を磨いた。晩年は会津や三春(現在の福島県三春町)を往来するなど、京都から遠く離れた東国で活動しながら独自の画境を切り開いた。
雪村の絵は、大胆でユニークな構図、自由かつ伸びやかな作風が特徴。後世にも大きな影響を与え、江戸時代には狩野派や尾形光琳らが雪村画を模したほか、近代では岡倉天心が雪村を「雪舟と並ぶ水墨画家」と称揚したという。
クローン画も初公開
県内で雪村の作品展が開催されるのは平成4年以来のこと。33年ぶりの〝里帰り〟で、「風濤図(ふうとうず)」など代表作のほか、常陸滞在期の「陶淵明図(とうえんめいず)」といった県内では初めて公開される作品もある。
また、当時珍しい自画像や、雪村に影響を受けた絵師の作品も展示されるが、中でもユニークな試みは、同館が東京芸大と米フリーア美術館が所属するスミソニアン協会との三者で製作した「クローン文化財」と「スーパークローン文化財」の公開だ。
クローン文化財は作品の現状を忠実に再現。スーパークローン文化財は劣化や欠損を補完し、完成時の作品を想定しながら復元したもの。原画はフリーア美術館が保存する「寿老人図(じゅろうじんず)」の、クローン文化財とスーパークローン文化財(いずれも歴史館所蔵)も披露される。
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特別展は「常陸からの旅立ち」「禅僧としての画業」「山水の筆様」など計7章構成で、2月15日から3月9日までの前期と同11日から4月6日までの後期に分けて開催。前後期で展示作品も7~8割入れ替える予定だ。期間中、講演会や同館学芸員による作品の解説、ギャラリートークなどの関連イベントもある。
同館は「武家の出自を負った画僧として常陸、阿武隈の山野を遍歴して培われた雪村作品は、個性的でバラエティーに富み、国内外から大きな関心を集めている。多くの人に鑑賞してほしい」としている。
開館時間は、午前9時半~午後5時(入館は同4時半まで)。入館料は一般690円など。休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日)。関連イベントなどの問い合わせは同館(029・225・4425)。