年が明けた頃に決まって各所から質問があるのが、「12月〇日の出来事を『昨年末』と言っていいか」ということです。
先日も一日に複数の記者から「昨年12月18日」や「12月23日」にあったことを「昨年末に行われた」と書いても差し支えはないかと尋ねられました。この記者たちは、大みそかに近い数日を「年末」と呼ぶのだという認識を持っていたようですが、「昨年末」という場合の具体的な時期が分からないとのことでした。いつからを「年末」と呼ぶのか、その解釈はさまざまですが、今回改めて考えてみました。
広辞苑(第7版)で「年末」に関する記述を見たところ、「としのすえ」「としのくれ」「歳末」と書かれてあり、その他の辞書でも「一年の終わり」などと漠然とした説明があるだけで、これでは答えが出ません。「12月を指す」「12月20日以降をいうが、それ以前を指すこともある」など、ある程度時期に触れているものもあるようですが、辞書によって解釈が異なるのでは決め手になりません。
辞書の説明が曖昧なのであれば、記事の内容から察しをつけるほかないようです。12月に入ってからの記事で「年末に寒波の到来が予想される」というと、大みそかに近い数日を想像しますし、過去を振り返る形で「昨年末」や「2020年末」というと一年を通じた終わりの頃を指していることがうかがえるため、12月中の出来事であれば読者にも誤解はないと考えることができます。
記者たちには「昨年末」と書いても問題はないと答えましたが、言葉の難しさを思い知った一件でした。(二)