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「普通のおばちゃんが小説書いて大きな賞…人生も面白い」 直木賞の一穂ミチさん一問一答

産経ニュース 2024年7月17日 23時16分

新型コロナウイルス禍を背景にした犯罪小説集「ツミデミック」で第171回直木賞に選ばれた一穂ミチさん(46)が17日夜、東京都内で記者会見を行った。一穂さんはこれまで顔を公表していなかったが、この日はマスクを着用して登場。「言いたいことは紙の中にある。物語の中で皆さんと会えたら」などと話した。

一問一答は以下の通り。

--今の気持ちは

「待っている間、緊張に耐えかねて、ビールを飲んでしまったことへの後悔、そして高齢の母がおりますので、冥途の土産が何とか間に合ったなという安堵でいっぱいです」

--パンデミック(世界的大流行)の経験をどのように作品に反映したか

「雑誌に短編を載せるに当たって、その短編のテーマに沿ったものを1編、2編と書いていくうちに、どうしても小説の中にコロナの要素が入ってしまう。それならば、このパンデミックの中の人たちをテーマに一冊の本に編めるようにしていこうと思って書きました」

「長いスパンで掲載されていたので、先行きの見えない閉塞感の中で書いたものもあれば、ウィズコロナの方向性が見えてきた時期に書いたものもあり、後に行くに従って社会のムードと同調するように明るい話になっていったりもしました。そういう意味ではリアルタイムでのパンデミック禍でなければ生まれなかった小説だと思っています」

--コロナ禍で起きた犯罪のニュースから着想を得たのか

「日々のニュースに触れる中で、例えば休業中の店に空き巣が入るといったことから始まり、お金を巡る犯罪もたくさん起こりましたし、犯罪でなくても人と人との小さい分断みたいなのがあちこちに起こってきたと思います。そういうものが自然に小説の中にも反映されたと思っています」

--これまで顔を出して会見などに出ることはなかったが

「やはり基本的には顔面NGでお願いしたいと思っていて、マスクが自分の中ではギリギリかなという感じです。今後もこういう機会があれば、マスクでの顔出しをお許しいただければと思います」

--登場人物の書き分けで大切にしていることは

「物語の中で人間をコントロールしようとしないことが、自分の中ではポイント。人間は誰しも矛盾をはらんでいる生き物であり、物語の整合性を追求しすぎるとプロットのためにいるキャラクターというふうに見えてしまう恐れがある。物語として破綻する危険はあるけれども、人間臭さの方を取って失敗するなら、私はその方が好きです」

--直木賞を受けて、今の気持ちを改めて

「今も自分が小説家だとはあまり思えないぐらいで、ただ普通のおばちゃんが小説を書いて、こういう大きな賞をいただけることもあるので、人生も面白いなと」

--最後に言いたいことは

「言いたいことは、これからも今までも紙の中に自分の言葉としてあります。物語の中でまた皆さんと出会えたら幸せです」

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