前から気になっていたアルバムの整理にようやく手をつけた。押し入れに詰まった大量のアルバムを前に思わずため息が出た。
一冊ずつ順番にめくっていくうちに、あることに気づいた。家族で撮った写真がいちばん多いのだが、祖母の髪形が全く変わっていないのだ。30年分の写真がある中、祖母の髪形だけが、いつの時代も、ひと筋の乱れもなく、きちんと同じ形に結い上げられている。
祖母は月に一度、タクシーを呼んで、昔なじみの美容院に行き、髪をセットしてもらっていた。ルーティーンになっていて、ひと月たりとも欠かしたことはない。
晩年は、外出するあてもなく、毎日家事とテレビだけで、訪ねて来る客もめったになかった。それでも月に一度の美容院通いだけは亡くなる直前まで続けていた。
誰も見ていないところでも、みだしなみをきちんとととのえる。明治女の心意気というものだろうか。
祖母のなつかしい写真に触発され、久しぶりにさっぱりとヘアカットをしてみる気になった。
結局、アルバムの整理は進まないままだけれど…。
住吉美和子(61) 大阪府吹田市