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終わりなき書の追求、16歳から 産経国際書展で高円宮賞 武富明子さん(81)

産経ニュース 2024年8月8日 16時30分

「私は決して書家ではありません。自分の作品はまだまだだと思うからこそ今後も追求できる。そんな努力を評価していただき本当にうれしい」

14日開幕の第41回記念産経国際書展で、最高賞となる高円宮賞に決まった。最も伝えたかったのは、7年前に82歳で亡くなった夫の静雄さんだ。「きっと、一番に喜んでくれたでしょうね。墓前には『いただきましたよ』と報告しました」

東京で生まれ育った。自宅の伝言板に何げなく書きつけた字を見た父の勧めで、16歳から書道教室に。「いろはに…」の基本から始めると夢中になり、大学でもかな書道を学んだ。卒業後は出版社に就職したが、2年で退職。書壇院展で最高賞をとるため、練習時間を確保したかったからだ。

「賞のためにやるわけではありませんが、山があるなら、やっぱり登りたいと思いました」

平安時代の巻物の臨書は1枚に6時間程度かかる。それを100枚近く書き、念願の最高賞を受賞した。結婚や出産で書の世界を離れたが、子育てが一段落した40代で再開。産経国際書展で準大賞、会長賞などの実績を積み重ねた。

今回出品した短歌2首は、自然を捉える表現が素晴らしいと思い選んだ。仕上げる直前、心臓の手術を受け、回復途上の体で30枚以上練習したという。「題材と感性が合えば、それも苦になりませんから」とほほ笑む。(大森貴弘)

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