19世紀末から20世紀初頭にかけてパリで活躍した画家、アルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)。アールヌーボーの代表的存在であるミュシャの作品と人生、功績をプロジェクションなどでたどる展覧会「グラン・パレ・イマーシブ 永遠のミュシャ」が、東京・渋谷のヒカリエホールで来年1月19日まで開催されている。
空間に入り込むような体験
「イマーシブといえば、イベントやアトラクション的な要素が強い印象があるが、本展は自信をもって展覧会といえる」と胸を張るのは、Bunkamuraの担当キュレーター、宮澤政男氏。イマーシブとは没入感を表す英語で、参加者が空間に入り込むような体験型の作品として、演劇や美術などの分野で近年注目を集めている。
本展はフランス国立美術館連合に所属する美術館「グラン・パレ」が設立したデジタル展示の専門会社「グラン・パレ・イマーシブ」とミュシャ財団が共同で制作。昨年パリで開催されたものを日本向けにアレンジし、今回初来日を果たした。
プロジェクションと好相性
広大なホールに、高解像度のイマーシブ映像によるミュシャの作品が音楽とともに投影される。動きも映像そのものも非常に緻密だ。「ミュシャはポスターの分野で評価を確立。拡大、複製されることを想定しているため、プロジェクションと相性がよい。拡大して鑑賞することで、ミュシャの細部までのこだわりや、構図の素晴らしさに改めて気づかされる」と宮澤氏。
ミュシャが後半生を注いで描き上げた連作「スラヴ叙事詩」が映像に登場するのも見どころの一つ。もともと最大で6×8メートルを超える巨大な作品だが、さらに拡大することで細部を堪能できる。同作は平成29年に来日して大きな話題となったが、「今や国外に貸し出されることはまずないと思われるので、高精細の映像で詳細を鑑賞できるのは貴重な機会」という。