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<朝晴れエッセー>菜園の花たち

産経ニュース 2024年8月7日 5時0分

職場を辞してより、わずかばかりの農地を借りて、家庭菜園を楽しんでいる。畑作りに関する知識は皆無の私、最初は迷うことばかり。友人に教えを請い、毎夜開くのは大切な教科書となった、家庭菜園大百科。旅に出れば車窓より興味を持って眺めるのは野菜畑のみ。

お尻の曲がった胡瓜(きゅうり)、虫食いのトマトでも都会に住む子供たちに送れば「おいしかった」との返事がある。年を重ねるごとに「お店に売ってるのと同じだね、鮮度は抜群! 味が濃いよ」などと言葉上手におだてられ、ますます畑作りに力が入り今年で7年目となった。

長雨が続きやっと陽のさした朝、畑に行くと早緑(さみどり)の葉の下に、黄色の花が咲いていた。近寄ると、今年初めて育てるズッキーニの花だった。朝日を受け輝くその姿に感動した私は、写真を撮り友人にラインで送った。

畑に咲く野菜の花は皆美しい。はかなげで品のあるオクラの黄花、楚楚とした紫花の茄子(なす)、燃えるような紅色の花豆の花、かれんなピーマンの白い花、数え上げればきりがない。

菜園に育つ野菜は実をつける前に、その姿を花で装う時期がある。毎朝夕畑に行き、吾子(あこ)の成長を見守るように、日々育ちゆく野菜を眺めるのを日課としている。

加藤八重子(77) 長野県松本市

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