「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー秋季号)で第172回芥川賞の受賞が決まった鈴木結生さん(23)は15日、シャツにジャケット姿で記者会見に臨んだ。一問一答は以下の通り。
――受賞の感想は
「ありがとうございます。何度か、芥川賞を受賞してこういう記者会見をシミュレーションしたことがありますが、想像をはるかに超えた華々しさで当惑しております。2日前までインフルエンザで倒れておりまして、たくさん変な夢をみて、これもその続きなんじゃないかと。これはいい夢なので、続けてほしいなと思います」
--受賞を聞いて、どなたに連絡を
「すぐ両親と彼女に伝えた。すごく喜んでここ(会見場)まで来てしまっています」
--お父さんから何か言葉は?
「抱きしめ合って父と子の友情を確かめ合いました」
--九州在住の方が芥川賞を受賞するのはかなり久しぶりですが、東京ではなく福岡で書くということに関して何か?
「僕の場合、本があればどこで書いても大丈夫だと思いますが、大学の図書館など落ち着く環境でやらせてもらっていると思っています」
--林芙美子文学賞佳作受賞の時、これまでの歩みに巡礼証明書をいただいた気がすると話していたが、芥川賞の意味は?
「作品を作るのは孤独な行為。誰にも知られず歩んでいくということで巡礼証明書と言いましたが、今回は、まだ2作目なので、これから先の旅がどうなるかはわからないけど、今のところ『魅力的な険しい道を歩んでいるよ』と言ってもらったような気がします」
--出身地の福島の人にメッセージを
「生まれは福岡なんですけど、1歳から福島で、小学生のとき担任と司書の先生が本を読むことを勧めてくれて、その道の先にこういうことがあった。福島はいろいろなことを考える原風景になっているのは確かで、これから先、そういうものを文学の場に残せる仕事をしていきたい」
--以前、本当に書きたいものがあるが、まだその技術がないと話していた。本当に書きたいものとは
「僕としては、あくまで古くて新しい愛の物語を書いてみたい。ただ、なにぶん技術が足りないところはあるので、絶えず勉強してよく考えながらそういうものを書いていきたい。芥川賞は本当に大きなステップを下さった。それがあるからこそ自分の文学にさらに真摯に向き合っていける」
―-ゲーテや芥川に伝えたいことは
「今回の作品ではゲーテ先生に返しきれないほど借りがあるので、申し訳ございませんと。芥川には小学6年のとき、知り合いから芥川の全集をもらって本の魅力に取りつかれたところもあるので、感謝したい」
--最後に一言
「たくさん楽しく話させてもらってありがとうございます。まだ未完成のものがたくさんあるので、これから一つ一つ完成させていきたいと思います」