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<朝晴れエッセー>愛情運◎記念すべき日に

産経ニュース 2024年7月1日 5時0分

信州への一人旅の朝、新聞の「今日の誕生月占い」に「愛情運◎記念すべき日に」とあり。期待を胸に旅立つ。

新幹線では隣が女性だったが、パソコン作業に夢中で一言も話せず。軽井沢では美術館へ。藤田嗣治の猫と少女の絵などをじっくりと見て回る。ここでもショップの方と話した以外、人と話すことなし。

午後は上田へ移動し、戦没画学生慰霊美術館「無言館」へ。涙なしには観られない作品をゆっくりと眺めて回る。数人のグループや二人連れがいたが、ここでも話すことなし。

昔、亡き妻と数回訪れていた近くの古刹、前山寺へ。誰もいない境内で立派な三重塔をぼんやりと見上げ、昔を偲ぶ。他にやることなし。

早めに出て門前で巡回バスを待つ。近くにキジ、トラ、クロなどの猫が3匹ほどたむろしていた。その先の方に、白くくたびれた老猫がじっとうずくまっている。チ、チ、チ、と呼びかけてもまったく反応なし。

ところが、他の3匹が去って行ったら、スーッと寄ってきて、足にスリスリ。なでてやったらゴロゴロとのどを鳴らし、すっかりくつろぎ、とうとう足元でスヤスヤと寝入ってしまった。

そうか、愛情運◎は猫だったのか。占いは当たった。

中野清臣(75) 千葉県柏市

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