老舗の古美術商やギャラリーが集まり、美術の街としても知られる東京・京橋にアート&ビジネス一体型施設「TODA BUILDING」が11月上旬、開業した。戸田建設(大谷清介社長)が新本社ビルとして建設。都心では、不動産事業者がアートと商業ビルを融合させて開発するケースが増えている。
「TODA BUILDING」は、隣接のアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)が入る商業ビル「ミュージアムタワー京橋」とともに都市再生特別地区制度を活用し、街に開かれた芸術・文化拠点の形成などを目的とした「京橋彩区」を構成。一体的な街づくりに取り組んでいる。
1~6階の低層部は芸術文化施設、8~27階にはオフィスが入る。同ビルのオフィスワーカーは約4千人と推計され、「京橋彩区」には約1万4千人が集まることも可能という。
戸田建設では新進クリエーターたちが集い、作品を発表し、評価を受け自立成長していく「ART POWER KYOBASHI」(APK)というアート事業のコンセプトを掲げている。
その一環として、1・2階共用スペースは新進アーティストの作品をパブリックアートとして展示。吹き抜けのエントランスロビーには、持田敦子のらせん階段「Steps」(2024年)が天井からつるされ、ビルに入った瞬間から、現代アートに包まれた感覚になる。
一般的にパブリックアートというと恒久的な展示物をイメージするが、「TODA BUILDING」では更新性を重視し、およそ1年半ごとに展示作品を替えるという。
「(ビルなどの)不動産は内装をなかなか更新しにくいが、パブリックアートを交換することで、今まで見慣れた不動産が刷新されたように見える。そういった効果は来館者のリピーターを呼ぶのではないか」と戸田建設の担当者。
また、1階のギャラリー&カフェ「Tokyo 8分」ではアート作品に囲まれた空間の中で、パンやコーヒーを楽しめる。現在、友沢こたおの新作個展「Fragment」が開催中だ(12月1日まで)。店名は、東京駅から徒歩8分の場所にあることを意味している。
3階には、現代アートを扱う4つのギャラリーが集結。顧客だけではなく、オフィスワーカーたちも休憩時間や終業後にぶらりと立ち寄って、国内外の最先端のアートを無料で鑑賞できるのもいい。
6階の「CREATIVE MUSEUM TOKYO」は、アニメやマンガといったポップカルチャーや現代アートなどを展示するミュージアムだ。
現在、「アニメ『鬼滅の刃』柱展-そして無限城へ-」が開催されている(来年3月2日まで)。「鬼滅の刃」に登場する、柱と呼ばれる最強の剣士9人にフォーカス。「無限城」の展示スペースでは、ソニーの最新技術によって城内の奇怪な空間が再現され、来館者を楽しませている。
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こうしたアート&ビジネス一体型施設のさきがけとなったのが、平成15年開業の「六本木ヒルズ」(森ビル)。ここの「東京シティビュー」では「SPITZ,NOW! ~ロック大陸の物語展~」(同1月15日まで)が開催中だ。
また、東京駅近くの「丸の内ブリックスクエア」(三菱地所)に隣接する「三菱一号館美術館」では、「『不在』-トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」(同1月26日まで)が開催されている。(水沼啓子)