長女が幼い頃、父親の私が毎日のように絵本を読んでやった。当時は仕事が昼からだったので、日の出とともに一緒に起き、午前中は外で遊んだり家で絵本を読んだりして過ごした。長女は木登りと泥遊びと絵本が大好きな子供に成長していった。
その長女が成人になり結婚して子供を産んだ。私にとっては初孫である。遠路はるばる会いに行くと、長女は赤ちゃんを心からかわいがり、夫と力を合わせて育てていた。うれしいことに、もうすでに赤ちゃん用の絵本を読んでやっていた。まだ百日祝いをしたばかりの孫でも、いろいろな動物の絵をじっと見つめ、「こんにちは」「ばいばい」という母親の声を聞いてはキャッキャと笑っていた。
絵本を読むとき、親は子供のためだけに自分の時間を使う。おそらくそれを感じられるからこそ、子供は絵本を読んでもらうのが大好きなのだろう。親を独占できる素敵な時間なのだ。
幼い頃の長女もそうだった。一冊の絵本を終いまで読んでやると、すぐさま「もう一度読んで」と何度もせがんだものだ。そんな幼子と二人きりで過ごす時間は何ものにも代えがたい夢のような時間だった。
そんな時間を今度は孫と持ちたいものだ。
佐々木晋(63) 北海道恵庭市