“英語脳”に憧れていた。世の中には、多言語話者などという人たちがいる。頭の中はどうなっているのだろう。多分、スイッチ付きの、英語のパイプ、日本語のパイプが脳内に張り巡らされていて、オン、オフにより、言語が切り替わるのではないか、などと想像していた。とにかく、彼らの頭を“パカッ”と開けて、上から中をのぞいてみたい衝動にかられた。
それができないなら自分の“脳“で体験するしかないということで、猛勉強開始。やっと、文部省認定実用英語技能検定1級(当時は文部省)を取得したが、やはり、バイリンガルのように話すことはできない。
しかし、テクノロジーの発達のおかげで、自分の部屋にいて、外国人とコツコツ、毎日、25分、英会話を楽しんでいるうちに、とうとう「アメリカ人と話しているみたい」と言われるようになり、自分でも驚いている。
私の“脳”には何らかの大きな変化が起きているはず。実感的には、脳の中のパイプというより、脳内の“ことばの湖”の中に英語と日本語が沈んでいて、その時、話している言語の単語がポカッと湖面上に顔を出すという感じ。とても面白くて、貴重な体験。「頑張ってよかった」と喜んでいる。
秋里好美(72) 神奈川県相模原市