母には、ネパールに仲良くしている家族がいる。秋に、その家の息子さんの結婚式に参加することになった。数年前に皮膚の難病が判明して以来、母は入退院を繰り返している。体調の悪化が危ぶまれたが、無事現地へと旅立った。
1週間ほど続いた異国の結婚式は、すこぶるにぎやかで明るい笑いに満ちたものになったようだ。身体が疲れないようにと、飛行機は人生初のビジネスクラス、機内食も豪華でワイン片手にばくばく食べ、「気持ち悪くなったら大変だから、控えようとおもってたんだけどね」と、屈託がない。
元来海外好きな母は「来年はブータンに行きたい」と、私が入れた紅茶を飲みながら、目を輝かせる。「身体が動くうちにやりたいことをやるべき」が口癖の母に触発されるように、参加費が高くて迷っていた大好きな紅茶のイベントにおもいきって参加した。香り高い数種類の紅茶と、それに見合う見た目も美しい料理、ビンゴ大会で紅茶に関する素敵な本を当てた。行ってよかった。何かと慎重な私の、ささやかな一歩だ。
「まだまだやりたいことがたくさんある」
古希を迎えた母の夢は膨らむ。
青木まさみ(45) 横浜市磯子区