2週間に1回は図書館で本を借りている。仕事と育児で空き時間など皆無の毎日だが、通勤電車の中での読書が楽しみで、鞄の中に本がないと落ち着かない。
先日も混雑した朝の地下鉄でいつものように本を読んでいると、すぐ後ろに立っていた女性から「すみません」と声をかけられた。満員電車の中、パソコンの入った大きなリュックは前に抱えているけれど、何か当たっていたのかなと不安に思いながら振り返ると、私より少し上くらいかなと思われる穏やかそうな女性が「それ、なんていう本ですか? 面白そうと思って…」と話しかけてきた。
驚きつつも苦情ではなかったことに安堵し、タイトルの書かれた扉部分を見せて「面白いです」と笑顔で答えた。タイトル覚えられただろうか。笑顔でうなずきながら「ありがとうございます」と、次の駅で降りていった。おとなしそうに見えたけど、大胆なことする人だな。
「面白そう」って思うほど背後から読んでいたのだと思うと、不快に思う人もいるだろうけれど、実はちょっとうれしかった。私は老眼が始まっており、本を少し離して読んでいたから、後ろからも見やすかったのかもしれない。
なんだか愉快な気持ちで会社に向かった。
上杉葉子(48) 東京都清瀬市