5月初旬、妻と郡上八幡へ行ったときのこと。
山上のお城へ向かおうと登山道を進んだが、どんどん目的地とは離れていくのが肌で感じられた。スマホで調べるとお城には通じていないようだ。諦めて下山したがさて、どうしたものかとスマホを注視する私を尻目に「時間がもったいない、地元の人に聞くのが一番」と妻は近くのバス停にいた生徒さんたちに道を尋ねた。
生徒さんたちは説明を始めたが、「ご案内しますよ」とその中の2人の女生徒さんが言ってくれた。
ただでさえ部活帰りで、バスの本数も少ないであろうにと恐縮している私たちに「大丈夫です」と歩み始めた。常にこちらを気遣いながら地元の行事のこと、高校生活や部活動のことなど話題を提供してくれながらの道中はとても素敵な時間となった。
別れ際、妻も私もせめてお名前や記念写真でもと思ったが、今のご時世そういう行為は何かと気を遣う。
帰宅後、この名前も知らない素敵な生徒さんたちの振舞いをお礼の気持ちを込めて学校宛へその旨を記したメールと寸志を送った。
数日後、部活動の顧問の先生から返信メールが届き、画像が添付されていた。開いてみると部員全員と思われる写真があの日と同じ笑顔で写っていた。
川嶋真二(58) 神奈川県藤沢市