「今日は餃子だからね!」
息子が元気なさそうなときには、いつもこう声をかける。すると、ただそっけなく「そう」と答えるだけだが、その顔に一瞬笑みを浮かべる。それが見たくて、私は餃子を作る。
最近残業などで帰りの遅い27歳の次女も、夕食が餃子だとわかると、「やったあ」と歓声をあげてくれる。今年30歳になる長女は、一昨年から高円寺で一人暮らしをはじめた。年に3、4回くらいしかわが家に帰ってこないが、帰るときには、いつも「パパ、餃子お願いね」と電話をしてくる。毎週お茶の稽古にでかける妻に、「今日餃子作っておくからね」と声をかけると、「まあうれしい、助かるわ」という。私は妻に感謝されることが一番うれしい。
私の餃子は、中身が硬くこりこりしている。たっぷりの肉、にら、竹の子、しいたけ、チーズだけしか入れないからだ。どうしても欠かせないのはチーズだ。チーズとしょうゆ、甘酢が絶妙なハーモニーを作るらしい。
焼き立てを一心に頰張っている家族の顔を見るとき、私はこの世で一番の幸せを感じる。そして、私が死んだとき、「もう一度、父さんの餃子を食べたいね」と、子供たちがきっと言ってくれるだろう。私の家族は、餃子でつながっているのだ。
比留間進(76) 東京都小平市