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サントリー地域文化賞にたかさき絵本フェス 母親の熱意、原画にこだわり30年

産経ニュース 2024年8月28日 20時19分

地域文化の発展に貢献した団体・個人を顕彰する第46回「サントリー文化賞」に長年、絵本原画展を開催してきた「たかさき絵本フェスティバル」が選ばれ、28日、代表の続木美和子さん(73)らが群馬県庁で会見し、喜びを語った。

「東京ではなく、地元・高崎で友人や子供たちと芸術鑑賞がしたい」。平成6年、続木さんが高崎市で営んでいた絵本書店の勉強会に集まる母親らが中心となって翌年1月、第1回展を開催。出版社のつてをたどって12日間の会期で1万人を集めた。以来、毎年1月か2月、高崎シティギャラリーを会場に2週間ほどの会期で開催している。

その手法は独特で、絵本や作家について専門家を招いた勉強会を重ね、出版社とも原画の貸し出し交渉や展示内容を詰めていく。原画は絵本の表紙と裏表紙を含むすべてを用意し、子供の目線に合わせ低い位置に展示。照明もチラシもプロに相談しつつ自前でやる。

貼り絵の技法で知られる世界的絵本作家エリック・カールの作品展や国内の著名作家を特集した。選考委員のノンフィクション作家、梯久美子さんは「この種の展示会は通常、出版社など送り手が主催するが、この絵本フェスは受け手が企画し、読みたいものを集めている。しかも、これだけの作品をよく出版社が貸し出したものだと驚かされた。なまじの信用力ではない」と評した。

受け手として、原画の芸術性に強い関心を寄せたのは子供たちだった。

「〝絵本を買ってあげるから、もう帰ろう〟という母親の提案を拒み、2回、3回と原画を見て回る子もいました。本物がわかるんです」と続木さん。そんな子供たちも今や母になり、父になり、子供を連れてフェスに来ることも。スタッフとして続木さんら創設メンバーを支える人も多い。

会期中は市内の飲食店や美容室、映画館に「まちなか絵本ぼっくす」を設置してもらって自由に読めるようにしたり、図書館に原画展に合わせた特設コーナーも設けたりしている。

「絵本が好き」という熱意によってつくり上げられた「絵本フェス」。さまざまな人をつなぎながら「後継者は沢山いますから、大丈夫、これからも続いていきます」(続木さん)。

サントリー地域文化賞受賞は「たかさき絵本フェス」のほか以下の4団体。楯と副賞300万円が贈呈される。

「蘭越パームホール」(北海道蘭越町)=音楽の楽しさを届け、地域密着のもてなしで交流の輪を広げる私設ホール

「えちごせきかわ大したもん蛇まつり」(新潟県関川村)=村の全集落でつくる大蛇が練り歩き、水害の記憶を継承するユニークなまつり

「勝山左義長ばやし保存会」(福井県勝山町)=お囃子の担い手を広げ、伝統のまつりの活性化と次世代継承を牽引

「全国『かまぼこ板の絵』展覧会」(愛媛県西予市)=かまぼこ板を使った作品募集と展覧会を続け、地域活性化に貢献

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