私の子供の頃は、自宅にピアノを持っている家庭は少なかった。母は青春時代、戦争で習いたくてもできなかったピアノや歌を私に託した。ピアノも初めは、紙の鍵盤で弾いていた。
その後、オルガンを買ってもらい、昭和40年には、アップライトのピアノがわが家にやってきた!!
私といえば、難しくなるにつけ練習をサボり…。ピアノの鍵盤蓋を開けることもなくなった。母に「ピアノが泣いているよ」と言われても練習はせず、一夜漬け状態でのレッスン通いだった。
それでも高3まで続けていた。今でも簡単な曲ならば、初見で弾ける。この年になり無性に弾きたくなっている。
そのピアノも物載せ台になっていたため、7年前に売却してしまった。誰も弾かなくなった末の決断だった。
夜、ピアノが運ばれていくとき思わず合掌してトラックを見送った。今頃どこかで役に立っていてくれたらうれしい。
サラリーマンでは大変だったであろうピアノの購入…今は亡き両親に感謝している。
孫がピアノを習い始めたので、今ピアノがあればどんなに良かったかと後悔している。
安部悦子(69) 東京都江戸川区