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左右に別タイプ乳がん、再発しやすい? 治療は十分、心配せずに がん電話相談から

産経ニュース 2024年8月27日 9時0分

がん患者やその家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は、立て続けに左右の乳房にがんが見つかり治療を受けた46歳女性の不安に、がん研有明病院院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。

――3年前に左乳がんステージⅠと診断され、左乳房を全摘しました。ホルモン受容体陽性、HER2陰性で、乳がん再発リスクを調べる遺伝子検査「オンコタイプDX」は低スコアでした。術後はタモキシフェンによるホルモン療法を受けていましたが昨年7月、今度は右の乳房にがんが見つかりました。

「3年前の左乳がんは、ステージIでホルモン療法がよく効くタイプなので、術後はホルモン療法のみで大丈夫です。右乳がんはどのような診断でしたか」

――ホルモン受容体とHER2がどちらも陽性で、左とは違うタイプでした。がんの大きさは1・8センチ、リンパ節転移はなく、ステージIです。術前薬物療法として、抗HER2薬(分子標的治療薬)のトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)、ペルツズマブ(同パージェタ)、抗がん剤のドセタキセルの併用療法を4コース、AC療法(抗がん剤のドキソルビシンとシクロホスファミドの併用療法)を4コース、計6カ月間、行いました。その後、右乳房を全摘。摘出した組織には、わずかに非浸潤がんがあったものの、浸潤がんは見つからず、(最初にがんがたどりつく)センチネルリンパ節生検も行いましたが、リンパ節にがん細胞はありませんでした。

「術前の薬物療法で浸潤がんが消失しているので、病理学的完全奏効(pCR)という状態だったのですね。ステージIのHER2陽性乳がんでは、トラスツズマブとパクリタキセルという軽めの治療で十分だと考えられていますが、それよりも強めの治療が選ばれ、よく効いたようです」

――術後はタモキシフェンを継続しながらトラスツズマブとペルツズマブの併用療法を受けていますが、これでよいでしょうか。

「今回の右乳がんに対しては、トラスツズマブとペルツズマブを14回(約9カ月)とタモキシフェン5年間の併用で十分です。左乳がんには、タモキシフェンをあと3年間続ければよく、右乳がんに対する治療でカバーされています」

――生理を止めるリュープリンを使っている人も多いと聞きました。

「閉経前ならホルモン療法にリュープリンを併用するとより高い効果が得られる可能性がありますが、左右ともステージIで、すでに術前薬物療法で生理が止まっているようなので、ホルモン療法はタモキシフェンのみで十分です」

――(がんが遺伝性かを調べる)BRCA遺伝子検査は陰性でしたが、40代で両側に発症した私は再発しやすいのでは…。仕事復帰も迷っています。

「BRCA以外の遺伝性要因は否定できませんが、左右で乳がんのタイプも違うため、たまたま2回の乳がんを経験したということかと思います。左右とも再発可能性はあまり高くはなく、十分な治療を受けています。再発のことは考えすぎないほうがよいと思います。仕事に復帰したいのであれば、それを妨げる理由はありませんので、ぜひ好きな仕事を続けてください」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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