Infoseek 楽天

PSA値の上昇で「前立腺がん」かと心配 MRI検査で「異常なし」でも生検は必要? がん電話相談から

産経ニュース 2025年1月21日 9時0分

今回の「がん電話相談」は、PSA(前立腺特異抗原)値の上昇から前立腺がんを心配し、今後の対応に悩む60代男性に、がん研有明病院の泌尿器科の手術担当部長、沼尾昇医師が答えます。

--令和4年に人間ドックでPSA値の上昇を指摘され3.7でした。半年ごとに測定し、最近の検査で5.3です。

「一般的にPSA値が4を超えると前立腺がんの精密検査が勧められます。ただ前立腺肥大症や炎症によっても値は上昇します。高齢だと前立腺肥大症の人も多く、基準値の4を超えても様子を見ることはよくあります」

陰性なら様子見でも

--MRI検査ではがんの病巣は見当たらないとのことでした。ただ担当医から生検(針で細胞を取り出して検査)をやらないと確定診断はできないといわれました。生検をしたほうがいいのでしょうか。

「MRI検査の画像ではがんを疑う影がなかったとのことですが、PSA値が4より高い異常値だと、治療対象となるがんのうち、10~15%はMRIでは見えない病巣があるといわれています。がんが検出された場合、病期分類はT1c(画像では分からないが針生検で発見されたがん)になります」

「生検は超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入し、状態を見ながら前立腺に細い針を10~12カ所刺して組織を採取。その組織を顕微鏡で確認し、がんの有無と、あった場合はその悪性度を調べます。相談者はPSA値が5.3で異常値の範疇(はんちゅう)となり、可能性は低いものの、がんが検出されるかもしれません。とはいえ画像で確認されておらず、あっても進行したがんの可能性は低く、積極的に組織検査や生検を勧めない病院もあります。私見になりますが、MRI検査で異常がなければ様子を見てもいいと思います」

--実は20年前から狭心症で薬を服用し、2年前から総腸骨動脈瘤で経過観察中です。

「前立腺がんの場合、他に深刻な病気があればそちらの治療を優先する、というのが治療方針の一つとしてあります。その場合、前立腺がんのような進行の遅いがんは、あえて治療を急がないという考え方になるのです。相談者の場合、深刻ではないものの血管系の合併症があるので、生検で前立腺がんを見つけたとしても、医師によって対応が変わることもあり得ます」

術後の尿漏れ、次第に軽く

--術後の尿漏れは、結構発生しますか。

「術後の尿漏れは高頻度で生じます。ただ時間の経過とともに尿漏れはどんどん軽くなります」

--そうですか。副作用が軽いとされる放射線療法はどうなのでしょうか。

「前立腺の放射線療法として外部照射療法(重粒子線治療など)と、内部照射療法(小線源治療など)があります。小線源治療は体内に小さな放射線源を挿入し、体の中から放射線をあてます。基本的に病期分類T2まで、悪性度を示すグリーソンスコア7以下のがんに対しては、『よい適応(適した治療法)』です。重粒子線治療は悪性度にかかわらず、全ての病期分類に対応できます。悪性度によってホルモン療法併用の有無が決まります」

--生検でがんが出なければ、どうすべきですか。

「生検が陰性ならPSA値を年1回、測るといいでしょう。一つの目安は、値が1.5倍になるかです。相談者は5.3なので、8程度まで様子を見てもいいのではないでしょうか」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

この記事の関連ニュース