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暑い屋外から冷えた室内へ…気温激変の「玄関前線」 自律神経の乱れに注意

産経ニュース 2024年7月25日 8時0分

関東甲信や近畿など各地で梅雨が明けた。うだる暑さの屋外から、冷房の効いた店に入って、体調がおかしくなることはないだろうか。これを気象用語の「前線」に例え、医師や気象の専門家が寒暖差による体調の変化などに注意を呼びかけている。

心身への負担を懸念

「前線とは、暖気と寒気の境目、つまり気温差が大きい場所を指す気象用語。冷房の影響により家や店でも玄関を境にして室内外で気温が大きく変わるため、この室内外の境目を〝玄関前線〟と呼んでいます」

こう話すのは、日本気象協会の気象予報士、小越久美さんだ。小越さんは〝玄関前線〟が心身への負担となることを懸念する。例えば朝の通勤時。冷房の効いた家を出て、猛暑の中を駅まで歩き、電車に乗り、また冷房の風にあたる-。

「暑い日が続くと冷房にあたる時間も長くなるでしょう。〝玄関前線〟を行き来すると、不調を来す人が増えるのではないでしょうか」と小越さん。

なぜ不調になるのか。それは、内臓の働きや血流の調整をつかさどる自律神経(交感神経と副交感神経)の働きに、気温が大きく影響するためだ。

切り替えが追いつかず

実際、気温が高くなると、2つの自律神経はどのように働くのか。

副交感神経は、心臓の拍動をゆっくりにして発熱を抑え、体温が上昇しないようにする。それでもさらに暑くなると、交感神経の働きが優位となり発汗を促し、汗の蒸散により体温を下げる。

一方、暑い外から冷房の効いた部屋に入ると、交感神経の働きで、血管が収縮し、体を温めようと心拍数が増える。しかし再び暑い外に出ると、副交感神経が優位となり心拍数を抑える。

このように、2つの自律神経はバランスを取りながら体調を保とうとするが、暑い日に〝玄関前線〟を挟んで部屋と屋外を行き来すると、自律神経の「切り替え」が追いつかなくなる。 小越さんとの共著がある順天堂大医学部の小林弘幸教授は、「急激な変化に対応しようとするうちに自律神経は疲弊する」と話す。

深い呼吸を繰り返すと効果的

また、交感神経優位な状態が続いてしまうことについても、不調の原因となると小林さんは指摘する。

例えば、紫外線を浴びることや、暑苦しさによるストレスは、交感神経を優位にする要因となる。加えてスマートフォンが手放せない暮らしの中では、交感神経優位な状態に陥りやすいともいう。

交感神経が優位な状態が続くと、エネルギー消費が増え、疲れやだるさを感じやすくなる。頭痛、めまい、食欲不振、便秘、下痢などを生じさせる場合もある。

こうした症状に悩むときは、副交感神経の働きを促す習慣を取り入れるとよい。その一つが「呼吸」を整えることだ。

副交感神経は睡眠中などのリラックスした状態のときに優位となる。

深く呼吸を繰り返すことで、副交感神経が優位になり、リラックスした状態になるという。長く息を吐くことにより、副交感神経の働きがよくなって、過度の緊張を緩めることもできる。

体をひねるストレッチで腸を刺激することも、自律神経を整えることにつながる、と小林さんは勧める。

「腸の蠕動(ぜんどう)運動は副交感神経が優位なときに活発になりますが、逆に腸に刺激を加えることで副交感神経の働きに作用することが期待できます」 (竹中文、田中万紀)

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