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乳がんの術前治療中に間質性肺炎と診断され、術後治療の選択に悩んでいます がん電話相談から

産経ニュース 2024年7月2日 9時0分

患者やその家族が治療や副作用などに関する悩みを寄せる「がん電話相談」。今回は、Ⅰ期の乳がんで、術前薬物療法の副作用から今後の治療選択に悩む50代女性からの相談です。がん研有明病院院長補佐で乳腺内科部長の高野利実医師が答えます。

──昨年8月、検診で乳がんが疑われ、9月に針生検で右乳がんと診断されました。がんの大きさは1.7センチでリンパ節転移はないⅠ期で、ホルモン受容体と、HER2はともに陽性でした。術前に、抗HER2薬のハーセプチン(一般名トラスツズマブ)、パージェタ(同ペルツズマブ)と抗がん剤のドセタキセルの3剤併用療法を4回受けました。

「Ⅰ期だと、先に手術を行い、術後にハーセプチンと抗がん剤のパクリタキセルの2剤併用療法を行うことが多いですが、少し強めの治療を術前に行ったようですね。術前治療は、その4回だけの予定だったのですか?」

──はい。4回を終えてすぐ手術の予定でしたが、発熱とせきがあってCT検査を受けたところ間質性肺炎と診断され、手術は延期となりました。

「それは大変でしたね。間質性肺炎の治療はどのようなものでしたか?」

──抗生剤治療で改善し、あとは経過観察だけでした。予定より3カ月遅れで右乳房全摘術を受けました。

「手術の結果は?」

──乳管内にわずかな非浸潤がんが残っていましたが、浸潤がんは消えていました。術後は、ホルモン療法のタモキシフェンの服用を始めています。担当医からは、ハーセプチンの併用を提案されましたが、CT検査をすると、まだ間質性肺炎の影が残っていたので、また間質性肺炎が悪化するのが怖くて断りました。浸潤がんは消えていたので、危険を冒してまで治療しなくてよいと思ったのですが、どう思いますか。

「確かに、術前薬物療法がよく効いていて、浸潤がんが消える『病理学的完全奏効(pCR)』でしたので、今後、再発の可能性は低いと言えます。それでも、ハーセプチンは術前と術後あわせて1年間投与するのが標準的なやり方ですので、間質性肺炎がなかったら、あと14回のハーセプチン投与をお勧めするところです。とはいえ、間質性肺炎が再び悪化すれば、命にもかかわりますので、慎重な判断が必要です」

「間質性肺炎の原因は、ハーセプチンよりもドセタキセルだった可能性が高く、ハーセプチンは試してみてもいいように思いますが、リスクはゼロではないのでホルモン療法だけで様子をみるのが無難な選択です。ホルモン療法は5年間続けますが、閉経後であれば、タモキシフェン以外に、アロマターゼ阻害薬も候補となります」

「ハーセプチンを使うことのプラス面とマイナス面のバランスは微妙なところですので、担当医ときちんと話し合い、納得した選択をすることが重要です。Ⅰ期のHER2陽性乳がんで、術前治療もよく効いていたので、すでに十分な治療を受けていると考えて大丈夫です」

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

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