今回は、心臓病や脳卒中の重大なリスクである高血圧についてお話しします。最近は、高血圧に対して24時間ずっと安定した血圧コントロールが重要であることが提唱されています。しかしながら、1日の血圧の変動は個人差があります。高血圧がずっと持続する場合は持続性高血圧と呼びますが、ある時間や状況だけ高血圧になる人もいます。例えば、病院での診察室と家庭で測定する血圧に差があることがあります。
家庭血圧は正常ですが、診察室や検診時に高血圧になる状態を白衣高血圧と呼びます。白衣高血圧は、以前は特に心臓病や脳卒中のリスクにならないとされていましたが、最近では未治療の白衣高血圧は、正常な人と比べると心臓病や脳卒中で死亡するリスクが上昇すると報告されています。それは、白衣高血圧だと思っていた人が、いつの間にか持続性高血圧になっていることがあるためです。白衣高血圧は正常血圧に比べて、持続性高血圧になるリスクが3倍高くなります。特に男性、糖尿病の白衣高血圧の人はリスクが高くなるため、家庭血圧の測定を継続的に行って持続性高血圧にならないか注意することが重要です。
反対に、診察室血圧は正常で、家庭や職場など診察室以外で高血圧であるのが仮面高血圧と呼びます。患者本人だけではなく、医師にも見過ごされることが多く、実は正常血圧と診断されている人の10・15%、診察室で140/90mmHg未満に管理されている治療中の高血圧患者の9・23%は仮面高血圧だと考えられています。仮面高血圧では心臓病や脳卒中のリスクが3・8倍と高くなります。
仮面高血圧は、(1)起床後に血圧が上昇する早朝高血圧(2)日中の仕事場のストレスで血圧が上昇する職場高血圧(3)就寝中や夜間になって血圧が上昇する夜間高血圧-に分類されます。早朝高血圧には、夜間高血圧が朝まで継続する「持続型」と、朝に急激に血圧が上昇する「モーニングサージ型」があります。特にモーニングサージ型は脳卒中発症のリスクが非常に高くなります。実際に脳卒中や狭心症が早朝に多い原因の一つとして考えられています。職場高血圧は、肥満症や昼間に睡眠をとる夜間労働者に多く、過労死の原因となることもあります。夜間高血圧は、朝に内服した降圧薬の効果が夜まで持続しない場合や心不全、腎不全、糖尿病、睡眠時無呼吸が要因と考えられ、また抑鬱(うつ)や認知機能低下リスクも伴います。
仮面高血圧を早期発見するためには、さまざま時間に血圧測定することです。起床時、就寝前、職場での昼休み等に測定し、場所や時間だけでなく季節でも血圧変動があるため毎日決まった時間に測定することが重要です、また仮面高血圧の対策は、塩分やアルコールの過剰摂取を控え、ミネラル豊富な食事、6~7時間の睡眠、禁煙、適度な運動など規則正しい生活習慣を行い、血圧変動が大きくなる寒い時期に注意しましょう。
(和歌山県立医科大学脳神経外科講師 八子理恵)