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夏本番、プール中も熱中症リスク 5月に授業前倒しの学校も 専門家「陸より注意」

産経ニュース 2024年7月18日 10時17分

週末にかけて西~東日本の広い範囲で梅雨明けが見込まれ、日本列島はいよいよ夏本番を迎える。すでに熱中症による死者や搬送者が相次ぐ中、子供たちを預かる教育現場でも対策が講じられている。水泳の授業を例年より早くスタートさせ、前倒しで終わらせるという取り組みだ。水温が一定より高いと水の中にいても熱中症のリスクがあり、専門家は「陸上での活動よりも注意が必要」と呼び掛けている。

今週でプール授業終了

毎年のように酷暑に見舞われる地域として知られる京都市。御所南(ごしょみなみ)小学校では今年、プール開きを例年より1週間早め、5月下旬に実施した。

学校側によると、5月中のスタートはこのところはなかった対応。今年も夏場は危険な気温が見込まれるなどとして、教員らから「暑さが本格化する前に水泳の授業を完了させたほうがよいのではないか」とする提案が事前にあり、採用した。

同小のプールは校舎4階の屋内にあり、天候に左右されずに必要分の授業をこなすことができたことも後押しとなり、今月19日をもって今年度の水泳の授業を完了する。

「温泉で泳いでいる状態」

プールでの熱中症リスクは、どの程度なのか。

「鈴の木こどもクリニック」(東京都品川区)の鈴木博院長によると、そもそもプール内ではゆっくり泳いでいても安静時の4倍以上の代謝量になる。さらに、水中で安静にしているときに体温が上がりも下がりもしない水温「中性水温」(33~34度)以上だと、じっとしていても体温は上がっていくため、「温泉で泳いでいるのと同じ状態」になるという。

鈴木院長は、プール特有の症状として、①水に触れているため汗をかいている感覚を得にくい②口の中が水でぬれているため喉の渇きを感じにくいーと指摘。「陸上の運動では自覚しやすいものが、はっきりとは感じられないということ。その意味では、むしろプールに入っているときのほうが熱中症の危険が高いといえるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

日本スポーツ振興センターによると、平成29年度までの5年間に全国の小中学校で起きたプールでの熱中症は179件あり、このうち半数は授業や部活動などの「水泳中」(水泳直後を含む)に起きた。

また、およそ3割に当たる60件は、「プールサイド」での見学中などに発生。水に入る前の準備運動のタイミングなどを含め、プールサイドに長時間とどまると熱中症リスクが高まる。

学校現場では、水泳中のこまめな水分補給や休憩などのほか、プールサイドにテントを張って日陰のエリアを設けるなどの措置が進む。

夏休みも開放せず

施設の老朽化や教師の負担を考慮し、フィットネスクラブなど民間の屋内施設で専門指導員らに授業を委ねる学校も増えている。

ただ、屋内でも注意は必要で、風など外気の影響を受けない分、熱がこもり、水温が下がらないというデメリットがある。京都市の御所南小でも同様の課題意識に基づき、開閉式の屋根をこまめにオープンにするなどの対応をとった。

教育現場における暑さへの懸念は、多岐にわたる。

秋田県大館(おおだて)市の長木小学校は、プール授業の開始を1週間早めて6月下旬から始め、今月中に完了させるほか、夏休み中のプール開放も取りやめる方針だ。

昨年は猛暑日が続いたお盆明け以降を中心に、休み期間の一部の日を中止としたが、今年は全期間となる。

同小の中井淳校長は理由について、「夏休み中のプール開放はおおよそ午後3時半ごろには終わる。つまり、まだ日が高い時間帯に、子供たちが帰宅することになる」と説明。同じ東北地方の山形県で昨年7月、女子中学生が部活動からの帰宅途中に熱中症とみられる症状で死亡した事例を挙げ、「帰り道に万一のことがあったら、という思いがある」と明かす。

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