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PL顆粒、カロナール、メジコン…処方薬が足りない 市販薬買い置きで自宅療養に備えを

産経ニュース 2025年1月31日 7時30分

風邪薬(総合感冒薬)や頭痛薬、せき止めの薬といった身近な処方薬が不足気味で、手に入りにくくなっている。供給側の事情に加え、インフルエンザ流行のピークが早く、新型コロナウイルス感染症と同時流行している影響もあるという。薬不足の中で感染症からどのように自衛すればいいのか、専門家に聞いた。

「大きな病院かドラッグストアで」

「お薬は、本当にないです。特に風邪薬系は全く足りません」。1月下旬、院内処方で薬を出す都内のクリニックに勤務する50代の看護師は、薬不足をこう嘆いた。

「PL顆粒(かりゅう)という風邪薬は、ドラッグストアにはあっても、うちのような小さなクリニックには入ってこない。もう2年くらい見ていません。一時期、頭痛薬のカロナールも一切なかった。せき止めのメジコンは、一時入ってきたのですが今は全くありません」

いずれも熱や頭痛、のどの痛み、せきといった風邪の症状があるときに使われる身近な薬だ。

「『具合が悪い。風邪薬が欲しい』と来院する人も多いけれど、『うちにはないので、大きな病院かドラッグストアに行ってください』とお願いしています。本当に、ないんです」と心苦しそうに打ち明けた。

後発薬メーカーの品質不正が発端

地域や薬の種類によって状況が異なるものの、医療機関ではここ数年、処方薬の不足傾向が続いている。令和2年から次々と発覚した後発(ジェネリック)医薬品メーカー各社の品質不正をきっかけに、一部の薬の供給が不安定になった。

また今季は、インフルエンザが急激に流行。抗インフルエンザ薬のタミフルについても、「年明け早々に一部医療機関から『足りなくて困っている』という声があった」と、静岡県感染症管理センター長の後藤幹生さん(60)は明かす。

厚生労働省が毎週公表している全国約5千の定点医療機関のデータによると、今季のインフルエンザのピークは昨年12月下旬で、1定点当たりの1週間の報告患者数は64・4人。前シーズンのピーク時は33・7人であり、ほぼ倍増の勢いだ。

しかし後藤さんは、タミフルなどの抗インフルエンザ薬は「体内でのウイルス増殖を抑えるだけで、症状に対する即効性などが得られるわけではない」と説く。タミフルは発症から48時間以内に飲めば、熱などの症状回復が1日ほど早くなる。熱を下げたいのであれば、市販の解熱剤を飲めば1~2時間ほどで下がってくる。

軽症なら自宅で安静にして

そのため、後藤さんは、頭痛やせき、発熱といった症状があっても軽い場合は、混雑する医療機関の待合室で長時間過ごして体調がさらに悪化したり、他の感染症をもらったりするリスクを負って受診するよりも、まずは自宅で療養するよう促す。

その際は、他の人となるべく接触せず、好物を食べて水分と栄養を取り、飲み慣れた市販薬などを飲んで、暖かくして静かに休養する。睡眠を十分にとって免疫力や体力を高めることが、根本的な回復につながるからだ。そういった事態に備えて、風邪薬や解熱剤といった身近な薬は、自分の体に合う市販薬を買い置きしておくことがおすすめだ。

ただし、2、3日の自宅療養でも熱が下がらず頭痛やせきが悪化したり、2週間以上せきや鼻水などの症状が残ったりする場合は、受診したほうがいい。

なお、インフルエンザの感染や重症化の予防に最も効果が高いのは、毎年欠かさずワクチンを打つこと。後藤さんは「この冬インフルエンザにかかって大変な思いをした人には、今年は10月にワクチンを接種して安心感を得てほしい」と呼び掛けている。

受診するか迷ったら電話で相談を

風邪の症状や体調の変化で受診するかどうか迷ったら、国の救急安心センター事業「♯7119」に電話して症状などを伝えれば、医師や看護師らから受診すべきかなどの助言を受けることができる。31都府県と5地域で運用中で、24時間対応のところが多い。

子供の急病には、小児科の医師や看護師らが対応する電話相談「♯8000」を。全国で利用でき、急患対応する医療機関が少ない夜間や深夜を中心に運用されている。(田中万紀)

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