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40代以上6人に1人「男性更年期」 検査キット企業「スキンケア同様にホルモンケアを」

産経ニュース 2024年11月5日 11時0分

なんとなく不安になったり、いらいらしたり、急に大汗をかいたり…。ここまで聞くと、多くの人が「更年期障害」を思い浮かべるのではないだろうか。ただ、ホルモンの減少を要因とするこの病にかかるのは、女性だけではない。日本では近年、「男性更年期障害」の患者が増加し、40歳以上では潜在的に6人に1人が罹患(りかん)しているとのデータもある。ホルモン数値を手軽に測定できるキットを開発した企業は、「スキンケアのような位置づけで、ホルモンケアが社会に浸透してほしい」とする。

髪の毛10本で安定結果

女性の更年期障害は、女性ホルモンの「エストロゲン」や「プロゲステロン」の減少、一方の男性更年期障害は男性ホルモン「テストステロン」の分泌減が、それぞれ引き金になる。女性ホルモンの減少は、女性では一般的に50歳前後で訪れる「閉経」と連動するが、テストステロンは、おおよそ40代から徐々に減ってくるものの、誰もに共通するはっきりした目安の現象はない。

大きく作用するのは、ストレスなど外的な要因だ。

更年期の男女の健康に関する情報発信やサービスを提供している「TRULY(トゥルーリー)」(東京)は今年3月、同社が開発した男性ホルモン検査キット「MENOPO CHECK FOR MEN」の実証実験を行った。

同キットは、毛髪10本を専用パッケージで同社へ送ると、約3週間で結果をLINE(ライン)で知ることができる。毛髪は抜く必要はなく、ハサミでカットすればOKだ。

血液からも測定可能だが、朝夕など採血の時間帯によってホルモン値が変動する。1カ月で1センチ程度伸びる毛髪を用いると、一定の長さがあれば数カ月分の値の平均値を算出できるため、より安定した結果が得られる。同社のキットでは、試料提供する毛髪は3センチ以上を推奨している。

実験は都内企業と共同で実施。企業側の20~40代の男性社員20人のテストステロン値をチェックすると、どの年代でも総じて、平均よりも低かった。相関が強かったのは「睡眠時間」で、1日の睡眠時間が4時間程度では、4段階で示されるランクが一番下だった社員もいたという。

男性更年期「よく知っている」2割届かず

令和4年に厚生労働省が行った「更年期症状・障害に関する意識調査」(全国の20~64歳の男女計5000人)では、「男性にも更年期にまつわる不調があることを知っているか」との問いに対し、女性の40代以降は30~50%程度が「よく知っている」と答えたのに対し、男性は最も高い60~64歳でも16・5%にとどまった。20~29歳では1割を切った。

自身の症状が男性更年期によるものという自覚がなかったり、他の病気と誤認したりして気付かない「隠れ更年期」の人も相当数、存在するとみられる。

社会的な影響では、症状が原因で離職したり配属が変わったりするケースも少なくない。会社などの組織では幹部級を担う40代以降が、男女とも更年期障害の主な発症年代。国内市場では男女合わせて年間6000億円規模の経済損失が生じているという調査結果もある。

拡大傾向の「メイルテック」

更年期などの心身の不調をサポートする取り組みは、女性は「フェムテック」、男性は「メイルテック」と呼ばれる。近年は新型コロナウイルス禍によるストレス増なども背景に注目度が増し、関連市場も拡大傾向にある。

トゥルーリー社の二宮未摩子(みまこ)CEO(最高経営責任者)は、「症状があったとき、更年期を頭に思い浮かべられる程度にまで、認知度を高める必要がある」と指摘する。

また、同社による実証実験では、参加社員から、テストステロン値を上げるために有効である「筋トレを始めようと思う」とか「食生活を改善することにした」など、意識の変容がみられたという。

二宮氏は、検査キットの利用は「体の状態を数字で把握でき、改善に向けたモチベーションになりやすい」とした上で、「スキンケアなど美容と同じレベルで、ホルモンケアが社会に広がってほしい。それが結果として、組織における生産性向上や個人のウェルビーイング(幸福感)の実現につながっていく」と話している。

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