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「抗菌薬はインフルや新型コロナに効きません」 6割近くがウイルスをやっつけると誤解

産経ニュース 2025年1月30日 8時10分

インフルエンザや新型コロナウイルスの感染症に抗菌薬は効きません-。医師が改めてそう呼びかけている。というのも、症状の似た別の病気で過去に受診して、処方された抗菌薬を飲みきらずにとっておき、鼻や喉に不調が出た際、服用しようとする人がいるからだという。「処方された疾患以外に使わないで。正しく服用して」と警鐘を鳴らす。

そもそも抗菌薬は感染症の原因となった細菌を殺したり、増殖を抑えたりするための薬で、インフルエンザや新型コロナには効かない。これらの原因はウイルスで、細菌ではないからだ。

ところが昨年、国立国際医療研究センター病院(東京)が行った調査では、約6割の人が、「抗菌薬(抗生物質を含む)がウイルスをやっつける」と誤認していた。「抗菌薬はウイルスに効かない」と正しく答えたのは、わずか16%にとどまった。また、抗菌薬が「インフルエンザに効果がある」との誤認も4割、「新型コロナ」についても3割近くが有効だと誤認していた。

なぜ勘違いするのか

なぜこうした誤認が起こるのか。感染対策に詳しい同病院AMR臨床リファレンスセンターの呼吸器専門医、藤友結実子さんは「抗菌薬が鼻水や喉の痛みに効くという誤った認識が浸透している可能性があるからだ」と指摘する。

インフルエンザや新型コロナへの感染が疑われた場合、検査を受け、診断が確定すれば、ウイルスを標的にして治療する薬が処方される。標的は細菌ではないため、当然ながら抗菌薬は処方されない。

他のウイルスが原因の感冒(風邪)と診断された場合も同様だという。ただし、せきなどの症状がつらい場合はそれを緩和するため、せき止めや、たんを出しやすくする薬などが処方されることがある。

一方、抗菌薬が処方されるのは細菌性の疾患だ。例えば、溶連菌が原因となる急性咽頭炎やマイコプラズマ肺炎などだ。症状がひどい急性鼻副鼻腔炎でも、処方されることがあるという。

急性鼻副鼻腔炎による鼻水やせきの症状など、抗菌薬で治療する疾患の症状はウイルスを原因とする新型コロナなどの際にもみられるものだ。そのため、人々が混同して、「効くのでは」と考えてしまっている可能性もある。また、急性鼻副鼻腔炎の併発が疑われ、新型コロナやインフルエンザの治療薬とともに抗菌薬が処方されてしまう場合もあり、用途を区別しづらくなるケースがあるようだ。

飲み残しは厳禁

同じ調査では「抗菌薬という言葉を聞いたことがある」と回答した人のうち4人に1人が、「とっておいた『抗菌薬』を(別の不調が生じたとき)自己判断で飲んだことがある」と回答した。

そもそも、処方薬の飲み残しは厳禁だ。「処方されたものを飲みきらずに治療が半端になれば、退治しきれず細菌が生き残る場合もあり、抗菌薬の効かない薬剤耐性(AMR)を持つ細菌が生まれてしまうリスクが高まる」という。

余った抗菌薬を勝手に服用すると、下痢や湿疹などの副作用を招く危険もある。「不要な服用をした場合にも、体内にいる細菌が薬に耐性を持つ薬剤耐性菌に変異してしまうリスクが高くなる」と藤友さん。処方された通りの方法で服用するようにと呼び掛けた。(竹中文)

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