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春節による移動で日本への影響懸念 中国で拡大のヒトメタニューモウイルス

産経ニュース 2025年1月10日 15時18分

呼吸器感染症のヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は、国内外で例年患者報告がある疾患で、風邪に似た軽い症状で済むことが多いが、人によっては重症化リスクを伴う。ワクチンや特効薬が存在しないのも特徴だ。流行が伝えられる中国では今月28日から春節(旧正月)に伴う大型連休を迎え、延べ90億人の国内移動が見込まれる。各国への渡航も予想され、日本への影響が懸念される。

hMPVは2001年にオランダで発見されたウイルス。患者の飛沫(ひまつ)や接触感染で広がり、多くの国で乳幼児を中心に冬から春に流行する。

日本ではhMPVが感染症法上の届け出対象となっていないため、詳しい感染者数は明らかではない。ただ、新型コロナウイルス禍による感染対策の強化などで、近年は流行が抑えられてきたともいわれる。

「国外からウイルスが持ち込まれれば、感染拡大の恐れはある」。こう指摘するのは、東京都や神奈川県内で診療を行う「ナビタスクリニック」小児科統括部長の高橋謙造医師だ。

高橋氏によると、hMPVへの感染は生後6カ月頃からみられるようになり、大半の人が小児期に感染を経験すると考えられている。ただ1度の感染では十分な免疫を獲得できず、何度も感染を繰り返しながら、軽症化していくという。ここのところ流行が抑制されてきた影響で、十分な免疫を獲得できていない層が国内に存在することも想定される。

初期症状はせきや発熱などで、大半の人は軽症で済むとされるが、乳幼児は「熱が長引く印象だ」と高橋氏。同じく風邪症状が出るRSウイルスは3~4日で解熱することが多いのに対し、hMPVは37~39度台の熱が5日程度続く人が目立ち、しつこいせきに悩まされる患者も少なくない。高齢者や基礎疾患を持つ人らはまれに重症化し、気管支炎や肺炎で入院が必要になることもあるという。

高橋氏は「hMPV感染症にワクチンや特効薬はないが、感染しても多くの場合は軽症で対症療法により回復に向かう」と説明。過度に不安になることはないとしながらも、「手洗いやアルコール消毒など基本的な感染対策で予防に努めてほしい」と語った。(三宅陽子)

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