2月に入り、鼻水やくしゃみを引き起こす花粉症のシーズンがやってきた。大阪における花粉の飛散量は今年、過去10年で最多とも予測され、まもなく本格化する。日本人の4割強が発症し、「国民病」とも呼ばれる花粉症。つらい日々を乗り越えるため、われわれはどんな対策を取ればよいのか。大阪公立大医学部付属病院耳鼻いんこう科の寺西裕一医師(41)に話を聞いた。
--まず、花粉症発症の仕組みを教えてください
「花粉症とは、植物の花粉が原因で起こるアレルギー性疾患です。日本ではスギやヒノキの花粉が原因になることが多い。私たちの体の免疫が、花粉を異物と認識し、過剰に反応することでアレルギー症状が出るのです」
--誰にでも発症リスクがあるのですか
「誰にでも発症の可能性はあります。ただ、遺伝的要因があるため、アレルギー性鼻炎の家族がいる人は発症リスクが高まります。スギ花粉の飛散量が増えていることに伴い、花粉症患者は年々増え、発症も若年化しています」
--患者数が増加傾向というのは私も聞いたことがあります。どのくらい増えているのですか
「国内における花粉症有病率は平成10年には19・6%でしたが、20年は29・8%、令和元年には42・5%にまで上昇しています」
--日本に住む人の半数に迫る勢いですね。どう対処すべきですか
「晴れの日、風が強い日、湿度の低い日は花粉の飛散が多くなります。特に朝は飛散量が多くなるので外出を控えるべきですが、なかなかそうもいきませんよね。マスクや花粉対策用メガネを着用し、花粉が体内に入ることを防ぐ。帰宅したらすぐにうがい、手洗い、洗顔、鼻かみを行い、花粉を落としましょう。鼻洗浄も有効です。外で着ていた服は、すぐに脱いで花粉を払い落とすことも大切です」
--自宅にいるときの対策は
「飛散の多いときは、窓や戸を閉めて花粉の侵入を防ぎます。空気清浄機もよいですね。掃除をこまめに行って、特に窓際を念入りにしてください。また、洗濯物は外に干さず、室内干しにするか乾燥機を使いましょう」
--耳鼻咽喉科で薬を出してもらうこともできますよね。いつ頃もらうべきですか
「毎年症状が出るという人は、花粉の飛散が始まる前や症状が出現してすぐの耳鼻咽喉科受診をおすすめします。飛散前や症状が軽い時期から薬を使うことで発症を抑えたり、症状を軽くしたりすることができます」
--それでも苦しい場合には
「投薬治療で症状が改善しない場合や、鼻腔(びくう)の形状に問題がある場合は手術もできます。最も簡単なのは、鼻腔の粘膜をレーザーなどで焼いて鼻水や鼻づまりを抑える手術です。鼻の穴を左右に隔てる鼻中隔に湾曲がある場合や鼻腔の粘膜が腫れていて鼻づまりがひどい人には、鼻腔形態改善手術を行います」
--いろんな手術があるのですね。ほかにも免疫療法があると聞いたことがあります
「アレルゲン免疫療法というのがあります。原因となるアレルゲンを投与することで、症状を緩和する治療法です。アレルゲンを注射する皮下免疫療法と、口の中に投与する舌下免疫療法ですね。いずれも長期間にわたり、通院を続ける必要があります。皮下免疫療法では、血圧が低下して意識がもうろうとする『アナフィラキシーショック』を招くことがあるので、そうしたリスクも頭に入れておかなければなりません」
--さまざまな治療法があることが分かりました
「それはよかったです。どんな治療法を選択すべきかは、病状に応じて異なります。医師としっかりと相談し、リスクなども把握したうえで決めることが大切ですね」(聞き手 藤原由梨)
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てらにし・ゆういち 昭和58年12月生まれ。大学での肩書は長く、大阪公立大大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学・頭頸(とうけい)部外科学講師。自身も軽度の花粉症だといい、先輩医師の花粉症研究に協力して舌下免疫療法を試したところ、効果があったという。花粉症シーズンの服装について尋ねると、「表面がけば立った毛織物などのコートは避けましょう」とアドバイスしてくれた。